レッツ連歌スペシャル(村瀬森露)・3月29日付

(挿絵・カールおじさん)
◎やっとなじんだジョギングの靴

出張のバッグにそっと押し入れて(松江)余村  正

非常時の持出品のリスト入り  (松江)木村 更生

三日目を迎えた遍路一人旅   (益田)石川アキオ

五センチの雪にマヒする首都東京(大田)福田 葉摘

大きめを買うくせのあるうちの母(松江)原  野苺

四年かけ三日坊主を退治して  (松江)佐々木滋子

安物を買ったツケだと悔やまれて(出雲)神門  晃

O脚はO脚なりの型に減り   (松江)木村 敏子

女房には内緒あの娘とペアルック(雲南)難波紀久子

お隣のドーベルマンが可愛がり (松江)森広 典子

頬なでる宍道湖畔の春の風   (松江)松田とらを

雨の日も風の日だって休まずに (松江)持田 高行

四月には四国遍路に出るつもり (美郷)源  瞳子

体重はどんどん増していくけれど(松江)山崎まるむ

むらさきにけむる北山春霞み  (出雲)石田 京子

二メートル超す大雪に悩まされ (美郷)芦矢 敦子

若き日のジーパンはけてほくそ笑み
               (江津)野坂 和子

逢えなくて三割増えた歩数計  (松江)多胡 誠夫

免許証返上をして頑張って   (松江)花井 寛子

近道があると知りつつ遠回り  (松江)金津  功

背丈ほど積もった雪がうらめしく(飯南)塩田美代子

定年を祝ってくれたあの日から (大田)杉原サミヨ

雨カゼニマケテヤスミガオオスギテ
               (出雲)原  陽子

赤札の訳思い知る足の裏    (松江)村田 行彦

ひとっ飛びして越えてみた水溜り(益田)可部 章二

挨拶を交わす仲間も増えてきて (松江)村田 欣子

アイドルのポチと暮らして七ヵ月(出雲)矢田カズエ

新調をなじった妻がほめてくれ (浜田)勝田  艶

道草の茶店も楽し寺社詣で   (松江)岩田 正之


           ◇ 

 人それぞれと言ってしまえばそれまでですが、雨風にかかわらずジョギングをする人もいれば、雨風で休む人もいます。遍路に出るのも、靴を慣らす準備をしてからの人もいれば、とりあえず始めてから慣らしていく人もいます。

 こういった個人差は、生得的に組み込まれているのか、生まれてから後の経験や環境によって形作られるのかということがよく話題になります。もちろん、生得的な面もあり、後天的に形作られる面もあるのですが、何を重視するかで立場が大きく分かれ、現在も議論が続いています。

 敏子さんの句を見て、この議論を思い出しました。靴のもともとの形や素材といった履く人にとっては生得的(?)な特徴に、履く人の体型や歩き方という後天的な要因が重なって、現在の靴のありようがあるのでしょう。そう思うと目の前の靴にも愛着がわきます。

 ただ、人の場合は靴とは違って、三日坊主のような自分のありようを振り返って変えてみようとしたり、置かれた環境を自分の意志で変えてみたりするので、ずっと複雑にはなります。

 誠夫さんの三割増えるというのは、いじらしくていいですね。これが数倍になると考えものですが。春はさまざまな出会いや別れがありますが、雨風や花粉に勝っても負けても、お休みしていたことを再開してみたいものです。

(島根大法文学部教授)

2012年3月29日 無断転載禁止

こども新聞