レッツ連歌(下房桃菴)・7月12日付

挿絵・小池泉水
 闇を切り裂く雷の音

覆面が浮かび上がった御金蔵  (益田)石田 三章

短冊に願いたくさん書きすぎて (雲南)板垣スエ子

独り寝は両手握りて身を縮め  (大田)丸山 葛童

取れるなら取ってみろよとヘソを出し

              (出雲)宝利ヒサユキ

泣きながら手に提げている螢籠 (松江)木村 更生

負けまいと得意の風で応戦し  (益田)小倉  豊

客が来るかぎりお店は閉めません(大田)掛戸 松美

巣立ちしたトキの行方を案じつつ(松江)余村  正

抱きしめてくれた大きな父の腕 (松江)松田とらを

歯ブラシを銜えたままで犬なだめ(浜田)松井 鏡子

我知らずしがみついたが縁となり(出雲)原  陽子

あのときにしがみついたが運の尽き

               (松江)高木 酔子

ウソつく子いじわるする子おらぬかな

               (松江)佐々木滋子

瞬きもせずに見つめる紙芝居  (浜田)勝田  艶

テントから車に逃げるキャンプ場(松江)多胡 誠夫

飛び込んだコンビニで買う週刊誌(松江)木村 敏子

どさくさに妻の悪口ガナり立て (松江)田中 堂太

出番かとオロチ袖から顔を出し (益田)石川アキオ

案の定懐中電灯電池切れ    (松江)山崎まるむ

指折って掛け算をする習い性  (美郷)源  瞳子

受験生いるに禁句をつい洩らし (益田)可部 章二

銅剣が荒神谷に出土して    (出雲)行長 好友

義元の首はころりと桶狭間   (松江)中西 隆三

お父さん門限九時は早すぎる  (松江)佐々木楽喜

椎茸のホダ木ピクピク震え出し (松江)梅田 蓉子

なにごともなかったように朝が来て

               (大田)杉原サミヨ

梅雨明けを待ちこがれてる海の家(松江)野津 重夫

           ◇

 更生さんの「螢(ほたる)籠(かご)」は、びっくりして落としたかと思ったら、しっかり握っていたのですね。いじらしい! これが、たとえば「驚いてぽとり落とした螢籠」でも、ぎりぎり入選はするでしょう。ただ、あんまりおもしろくはない。連歌はフィクションですから、どちらを選んでも、だれも文句は言いませんが、その選びかたにセンスは問われます。

 松美さんの「お店は閉めません」、鏡子さんの「犬なだめ」などは、前句が「雷」でなくても付きそうです。ということは、前句とのつながりがそう強くない、ということ。これくらい離れてみるのもいいことです。雷、雷、雷、…と考えているだけでは、こういう句はできません。

 陽子さんと酔子さん、同じヨウコさんでも大違い。いいえ、これもフィクションですから…。

 流れ星の消えぬ間に願いごとを言えたためしが、私はありませんが、堂太さんの「妻の悪口」―、これはそれよりずっとむずかしそう。とっさにはとても無理だと思います。ふだんの心がけなのでしょうね。

 瞳子さんの句―、三四〇×七、なんてとっさに計算するのですね。だれにでもできる暗算、というわけではない。

 章二さんの句は、「落ちた!」と言ってしまったのでしょうか。そこで慌てて、「ごめん、ごめん。口がスベった」???

 雷が鳴るとホダ木が震える…ものかどうか、私は知りません。いえ、たぶんウソでしょう。でも、夢がある。蓉子んの句、ディズニーのアニメにでも出てきそうです。

           ◇

 次の前句は、趣を変えて、

  言い返さぬと気の済まぬタチ

 そういう人っておられますが、さて、この句にはどんな五七五が付くのでしょうか。

2012年7月12日 無断転載禁止

こども新聞