紙上講演 京都大学准教授 中野剛志氏

京都大学准教授 中野剛志氏
 TPPでは生きられない~「デフレ」からの脱却策は

 日本の農業市場獲得狙い

 山陰中央新報社の石見政経懇話会と石西政経懇話会の定例会が24、25の両日、浜田、益田両市内であり、京都大学准教授の中野剛志氏(39)が「TPPでは生きられない~『デフレ』からの脱却策は」と題して講演した。要旨は次の通り。

 環太平洋連携協定(TPP)は、2008年のリーマンショック後、米国が自国の成長戦略の一環と位置づけて推進している。

 リーマンショック後の課題は、米国をはじめとした輸入超過国と、日本を含む東アジアを中心とした輸出超過国の不均衡の是正であり、これは日本を除く世界中の指導者が認識している。

 この考えの下で米国はTPPを推進し、オバマ大統領は今後5年間での輸出倍増を表明。貿易赤字の是正に乗り出す方針を打ち出した。

 TPPの問題は、米国の狙いが日本市場のみにあることで、日本が参加しても利はない。これは中韓が参加しないことなどからも明らかだ。

 米国の思惑は、TPPに日本を誘い込んで関税をなくした上で、為替をドル安に誘導。自国の市場や雇用を日本に奪われず、日本の農業市場を獲得することにある。

 しかも米国は農業だけでなく、日本の保険や食品安全の市場も狙っている。

 だが、菅直人首相は参加に前向きな発言をしており、民主党代表選に立候補を表明した前原誠司前外相も、TPPを「日米同盟強化の一環」と位置づけている。残念ながら、明らかに誤った考えと言わざるを得ない。

2011年8月26日 無断転載禁止