紙上講演 東京大教授 鈴木宣弘氏

東京大教授 鈴木宣弘氏
 TPPと国益

 日中韓FTAで発展を

 山陰中央新報社の米子境港政経クラブ、島根政経懇話会の定例会が28、29の両日、米子、松江両市内であり、東京大教授の鈴木宣弘氏(52)=農業経済学、国際経済学=が「TPP(環太平洋連携協定)と国益」と題して講演した。米国が求めるTPPへの参加ではなく、日中韓の自由貿易協定(FTA)で日本経済を発展させるのが有効だとする対案を提起した。要旨は次の通り。

 TPPは農業問題にすり替えられるが、金融、保険、医療などのサービス分野の自由化や、政府調達、市町村の公共事業を海外企業が落札する可能性も出てくる。個別事項を前面に出し議論していかねばならない。

 農業を輸出産業にして強くすればよいというTPP推進論もあるが、大規模化した米国や豪州と競争するには、努力では超えられない格差がある。食料は軍事、エネルギーに並ぶ、国家存立の3本柱の一つ。食料が身近に手に入る価値を共有し、多面的機能についても理解を深める必要がある。TPP参加は農業の将来展望を暗くする。

 輸出産業を伸ばす大切さも理解できるが、規制と自由化の最適なバランスを考えることが重要だ。TPPに参加すれば、これから経済成長する中国をはじめとしたアジアと分断される。日中韓のFTAが来年、事前交渉に入り具体的に動きだす。柔軟性、互恵性があるFTAなら着地点も見いだせる。米国をとるか、中国をとるかという非常に難しい政治、外交問題にもなるだろう。

 TPP議論を契機に、地域の10年後の姿を想像し、将来に禍根を残すことのないよう議論し最終的な判断を出すべきだ。

2011年7月30日 無断転載禁止