紙上講演 同志社ビジネススクール教授 浜矩子氏

同志社ビジネススクール教授 浜矩子氏
 東日本大震災と日本の経済

 「君富論」へ発想転換を

 山陰中央新報社の米子境港政経クラブの定例会が28日、米子市内であり同志社ビジネススクール教授の浜矩子氏(59)が「東日本大震災と日本の経済」と題し、震災の教訓と、1ドル50円時代の到来に備えて持つべき視点について提言した。要旨は次の通り。

 今回の震災では4つのメッセージが投げ掛けられた。1点目が「解体の誤謬(ごびゅう)にご用心」だ。全体でつじつまが合っていても、内部でアンバランスが生じている「解体の誤謬」の例が東京電力。東京の電力をすべてまかなうために、実は都市部周辺に原発を持つという(内部体制の)もろさを露呈した。

 次に一極集中をつくるだけの「選択と集中はやめよう」。今回の震災ではその弊害が明らかになった。粘り強い経済をつくるには多機能分散型の社会を目指すべきだ。また「オオカミと子羊はともに生きるべし」ということも学んだ。震災後にコンビニで商品が無くなったが、個人商店の店頭には残っていた。オオカミ(コンビニ)と子羊(個人商店)が共存できれば有事でも慌てない。

 最後が「誰も一人では生きていけない」。他人を蹴散らして生きるグローバル時代に対し、みんなで生きる環境づくりの視点が求められた。

 日本がこれだけの大災害を受けたにもかかわらず、円高の傾向に変化はない。ドルが基軸通貨として終えんに向かう歴史力学と、ドル安を追求する米国の通貨政策が相まり、1ドル50円時代に向かっている。明確な基軸通貨がなくなり、不安定なグローバル時代を生き抜くために必要な視点は、自分さえよければという「僕富論」から、他人の富が減らないように手を差し伸べる「君富論」への発想の切り替えだ。

 日本が震災の立ち直りの中で、君富論を構築し、世界に手を差し伸べれば、グローバル化によってインフラ開発や資源開発の独り占め合戦が活発化し、首を絞め合う世界の状況も変わるはずだ。

2011年6月29日 無断転載禁止