レッツ連歌(下房桃菴)・10月11日付

(挿絵・カールおじさん)
 先にお知らせした「浪速の芭蕉祭」。去る十月七日、大阪天満宮にて入賞作品が発表になりました。

 前句付(まえくづけ)部門の大賞は、われらが源瞳子さんの、

  酔えば手品のタネ明かす癖

 初めての女の子にはちょっとモテ

 「女の子には」の「は」が効いていますね。助詞「は」には、「対比すべき事柄を言外におくことにより強める」(日本国語大辞典)という一用法があります。で、瞳子さんの場合の「対比すべき事柄」とは…、わざわざ言外にお置きになったのですから、私はご説明いたしませんが、みなさん、もちろんお分かりですよね。うまい句作りだと思います。

 このほか、レッツ勢からは、吉田重美さんの、「ブレーキの利かぬ車は乗っちゃダメ」をはじめとする四句が佳作に選ばれました。

 もっとも、選に当たられたのは、なにを隠そう桃菴センセ。とはいえ、選は、作者名を伏せた資料によって行われております、念のため。

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 昼かと思う月の明るさ

野良仕事終えてくつろぐ露天風呂(浜田)勝田  艶

飲み干すに惜しい酒杯に映る影 (松江)渡部 靖子

屋根の上鼠小僧が立ちすくみ  (出雲)原  陽子

稲掛けをしたその昔なつかしく (安来)景山 恒夫

化粧して来ればよかった水燈路 (松江)森広 典子

岩場にはサザエやニナが這い上がり
               (松江)木村 敏子

しみじみと妻の顔見て皺数え  (美郷)芦矢 敦子

ウサちゃんの餅はほどよく搗きあがり
               (浜田)重木  梢

カッコよく太極拳をやってみる (出雲)川上 梨花

どこまでも追跡続く捜査網   (松江)川津  蛙

お別れが悲しいと泣くかぐや姫 (松江)中村 清子

友達が恋人となる初キッス   (松江)花井 寛子

一仕事終えて静まる千枚田   (松江)岩田 正之

冬は雪夏は螢の苦学生     (松江)田中 堂太

定年で初めて知った秋の夜   (江津)花田 美昭

米粒に般若心経写し終え    (松江)安東 和実

巣穴から出たコウモリが引き返し(益田)大賀 政敏

自販機の下に転がるワンコイン (松江)高木 酔子

神々も出雲の国に集い来て   (雲南)板垣スエ子

あれもダメこれもダメただ手をつなぐ
               (雲南)佐藤 風子

いらないと言う子に持たす反射材
              (出雲)宝利ヒサユキ

コンビニも見守っている塾帰り (出雲)飯塚猫の子

窓際にベートーベンの指踊り  (益田)小倉  豊

子狸も猛特訓の腹鼓      (浜田)滝本 洋子

雲ひとつくらいはほしい影ふたつ(松江)多胡 誠夫

怖がってくれる子いない肝試し (松江)持田 高行

白銀のマッターホルン冴えわたり(松江)森  笑子


           ◇

 月の光ほど妖しいものはありません。古来いく組の男女が、森で泉で砂浜で「初キッス」を交わしたことでしょう。とはいえ、あまり明るすぎると、「ただ手をつなぐ」だけという、残念な結果にもなりかねません。そこで「雲ひとつくらいはほしい」わけですが…。

 同じような内容の句は、他にも四、五句ありました。その中で誠夫さんの句を選んだのは、「雲ひとつ…影ふたつ」という表現のおもしろさに、ただただ、ひかれたからでした。

           ◇

 次の前句は、いきなり無粋になりまして、

 仲裁をして二人から恨まれる

ま、ありがちなことではあります。

この句に七七の付句をお願いいたします。

2012年10月11日 無断転載禁止

こども新聞