レッツ連歌(下房桃菴)・1月10日付

(挿絵・岡本健一)
<2013年新春特集>

 あけましておめでとうございます。

 おかげさまで、この「レッツ連歌」も二十年目を迎えることができました。そこで、これまでの入選作の中から、「レッツ傑作二十選」と題して、特に印象に残った名句をあらためて選んでみました。もっとも、今回対象にしたのは、一九九四年一月にこのコーナーが始まってから、第二〇〇回を迎えた二〇〇二年八月までの作品に限っております。

 古くからのファンのかたには、なつかしく思い出していただくことができるのではないでしょうか。最近始められたかたには、いわばレッツの「古典」として、大いに楽しんでいただければと存じます。

           ◇

レッツ傑作二十選

 黒きものこそ白くなりけれ
ただ今の勝負行司の差し違い (川本)科納  聴
       第一九回(一九九四・一〇・一三)

 泊まって行くと嬉(うれ)しがらせる
ごめんねと仏壇の戸をそっと閉め
              (松江)長崎 言成
        第二七回(一九九五・二・二三)

 ポケベルが鳴って刑事の顔になり
またかと母ちゃん時計見上げる
             (美保関)小谷  綾
        第二九回(一九九五・三・二三)

 隣の庭の柿は鈴なり
買った甲斐あった高枝切りバサミ
              (松江)丸山乃里子
        第四四回(一九九五・一一・九)

 隣の客は今日は二人目
田舎じゃねぇフランス料理はちょっとねぇ
              (平田)原  陽子
       第六六回(一九九六・一〇・二四)

 ひとりとは思えずふたりとも見えず
羽織の中でくしゃみこらえる (松江)田川 君江
       第一〇一回(一九九八・五・一四)

 思わぬとこで先生に会い
劇場の一番前の禿(はげ)頭 (宍道)木幡  允
        第一〇五回(一九九八・七・九)

 首振るだけで終わる面接
連獅子の配役決まる二次審査 (宍道)高木 酔子
       第一二三回(一九九九・四・二二)

 名作を台無しにする半可通
鴫(しぎ)立つ沢の秋の夕方 (松江)太田 勝利
拍手したのにまだ続く曲   (宍道)岩田 正之
       第一二四回(一九九九・五・一三)

 新妻は手作りパンに凝っており
池の鯉みな丸々と肥え    (松江)大久保大雲
       第一二五回(一九九九・五・二七)

 草ぼうぼうの一坪農園
ご希望の方に鈴虫差し上げる (松江)村瀬 泰三
      第一三五回(一九九九・一〇・二八)

 犯人を二時間ドラマ追いつめる
都合よくある断崖絶壁    (松江)石井 大我
       第一四八回(二〇〇〇・五・二五)

 ビアガーデンで雨に降られて
新聞に包んで帰る生の肉   (松江)川津  蛙
       第一五五回(二〇〇〇・九・一四)

 あのドアがここに通じている不思議
別の私と鉢合わせして    (松江)北陽  裕
       第一七二回(二〇〇一・六・一四)

 豆の木がジャックの庭にまたも生え
登ろうとする孫を引き止め  (松江)木村 更生

 その横で白馬の君も鼾(いびき)かき
眠れる森の美女吉本版    (宍道)原  野苺
       第一七三回(二〇〇一・六・二八)

 顔にべたりとかかる蜘蛛の巣
この町に鑑定団が来ると聞き (松江)松田とらを
       第一九五回(二〇〇二・六・一三)

 気に入りの帽子を風に飛ばされて
チャーザー村に多き肥溜め  (大田)杉原 哲也
       第一九七回(二〇〇二・七・一一)

 東北の人九州の人
あんたらちゃ訛(なま)っちょーがネやれんがネ
              (平田)原  愼二
        第一九九回(二〇〇二・八・八)


            ◇

 いかがでしたか。

 すでにお亡くなりになったかたの作品もあります。市町村名もあえて当時のままにしておきました。

 レッツの歴史というと大げさですが、多少なりともその重みのようなものを感じ取っていただけたのではないでしょうか。

 というところで、また新たな一歩です。

            ◇

 ヤマタノオロチ苦笑いする

オレ様が大活躍の年賀状    (松江)木村 敏子

スサノオにエール送られ春迎え (松江)佐々木滋子

じいちゃんは孫の剣で切られ役 (益田)竹内 良子

十二党火花散らした選挙戦   (益田)大村 里枝

熱演にからまる首をもてあまし (美郷)芦矢 敦子

一升は飲んでた今は缶ビール  (浜田)山村 喜彦

青汁を飲まされている罰ゲーム (松江)杉本 末吉

船頭が多くて行方定まらず   (出雲)原  陽子

ゆるキャラでとてもかわいく登場し
               (美郷)源  瞳子

まだ負けぬ舞ってみせるとご老体(松江)松田とらを

メンバーの平均年齢喜寿を越え (松江)多胡 誠夫

不景気で発泡酒ですけどサァどうぞ
               (雲南)佐藤 風子

何回も切り殺された神話博   (松江)持田 高行

アラあなたいい男ねと逆ナンパ (雲南)渡部 静子

斬られ役ばかりですねと労われ (益田)黒田ひかり

待ってたと町おこし役頼まれて (雲南)横山 一稔

園児から手編みマフラー贈られて(松江)森  笑子

酒樽が七つしかないもどかしさ (出雲)行長 好友

八番目七番目よりちょっと落ち (雲南)大和 貞子

投げられたおヒネリ踏んでずっこけて
               (浜田)大井 一弥

がんばってみても毎回退治され (雲南)板垣スエ子

自民党怒濤のごとく当選し   (益田)兼子 哲彦

いつになく忙しかった神話博  (松江)森  敦子

平成の世にも棲んでる永田町  (浜田)滝本 洋子

神職の鬘(かつら)が取れた禿げ頭
               (松江)庄司  豊

代替わりした神主はどげかいな (松江)山崎まるむ

年賀状どのヘビ見てもかわいくて(出雲)矢田カズエ

園児らは泣いて騒いで逃げまどい(松江)余村  正

イベントに引っぱりだこの年男 (松江)岩田 正之

スサノオがカミアリーナで大暴れ(松江)林谷 悦子

命より君が主役の神楽舞    (雲南)難波紀久子

酒樽をインド公演ワインにし  (浜田)松井 鏡子

八雲立つ出雲人口減るばかり  (松江)川津  蛙

悪役もヒーローとなる神話博  (出雲)津戸 弘光

着脱が自由にできる首を持ち  (松江)木村 更生

初孫がジイジジイジと寄ってくる(江津)花田 美昭

メートルが上がった姫が待機して(松江)相見 哲雄

どや顔になってしまった福笑い(出雲)宝利ヒサユキ

客席に飛んだ鱗(うろこ)が二三枚
               (松江)福田 町子

二つにも三つにも揺れる稲田姫 (益田)石田 三章

われわれがキングギドラのモデルとか
               (大田)掛戸 松美

神話博今年も一度やらんかね  (江津)岡本美津子

桶ごとにウオツカやジンも入れてくれ
               (松江)渡部 靖子

お決まりの飲酒運転防止キャラ (益田)可部 章二

スネークといえど立派なドラゴンズ
               (松江)中西 隆三

女子会にキャーカワイイと囃されて
               (益田)吉川 洋子

ちっぽけな男一人とあなどって (大田)柴 わん子

夜神楽を舞っていきなり五キロ痩せ
               (松江)花井 寛子

妖怪と境港で技競べ      (安来)根来 正幸

待ち受けにするとケイタイ向けられて
               (飯南)塩田美代子

女子会にもっと酒豪がいると聞き(雲南)安部 小春

斐伊川の水面に映える男ぶり  (美郷)遠藤 耕次

スサノオの太刀がからんで面が取れ
               (松江)野津 重夫

クシャミしてマスク八枚手渡され(益田)石川アキオ

おひたしや煮物が妙にほしくなり(松江)水野貴美子

酒樽にとぐろを巻いた有田焼  (浜田)勝田  艶

ガンバレの声はたしかにわが子なり
               (松江)高木 酔子

箸見つけやって来ました山ガール(松江)森広 典子

ねえオジさんそのツノどこで売ってるの
               (浜田)三隅  彰

掛け軸になって納まる守り神  (江津)江藤  清


           ◇

 今年の年賀状、まさに「オレ様」が大活躍でしたね。巳年ですからオロチが出てきても不思議はないのですが、こんなに多いのは、やっぱり去年の神話博の効果なのでしょうか。おかげで島根がずいぶん注目されました。「今年も一度やらんかね」と私も言いたい…。

 隆三さんの句、「オロチ」に「スネーク」はそのままなのですが、「ドラゴンズ」と対比させた点がお見事です(頭が八つもあれば、やっぱり複数形でいいのでしょうね)

 たしかにオロチの顔は龍そのもの。というより、架空の動物である龍は、どう考えてもヘビがモデルに違いない。それが証拠に、広東料理に「龍虎鳳(りゅうこほう)」というめでたい献立がありますが、これに使われる龍は実はヘビだということです(鳳は鳳凰(ほうおう)のことですが、この鳥もほんとはいないので、ただのニワトリ。虎はいるけれど、簡単には手に入らないので、これはネコ)

 この龍とヘビとが両方とも十二支に入っているというのが、私はつねづね不思議でなりません。それも、辰巳…と続いているのですから。

 私のもらった、ある人からの年賀状は、構図が去年とまったく同じでしたよ。

           ◇

 さて、無駄話はやめて、今年最初の前句です。

  思いもかけぬチョコ届けられ

なんてことがあればうれしいのですが…。

 この句に五七五の付句をお願いします。

2013年1月10日 無断転載禁止

こども新聞