大田二中1年生 世界遺産登録5周年

 石見銀山遺跡の魅力や課題探る

 石見銀山遺跡は、世界遺産登録されて5周年を迎えています。大田市立第二中学校の1年生80人は、昨年の11月20日に石見銀山学習に出かけました。世界遺産センターで石見銀山の価値について学習し、その後、班ごとにテーマを決めて自主研修。また、観光客に「石見銀山の魅力をどう感じているのか」を“突撃インタビュー”しました。後日、取材班で大田市役所石見銀山課の林泰州課長、観光振興課の楫野美里課長補佐に、登録後5年間の実績と課題についてもインタビューしました。これらのことを踏まえて、石見銀山の現状と課題、そして今後の展望について報告します。


自主研修中の大田二中生
 暮らしと環境との調和を

 石見銀山への観光客数は、世界遺産登録前の平成18年は約40万人だったのに対し、登録された平成19年には約71万人と、2倍近くになりました。そして、登録後の平成20年は約81万人となり、過去最高を記録しました。しかし、その後は次第に減ってしまい、平成24年は約43万人となっています。

 近年の観光客減少は、世界遺産登録後に急激に増加したことに原因があることが分かりました。登録後もしばらくは龍源寺間歩行きの路線バスがありましたが、排ガスの問題もあり、銀山周辺の人々や環境のことなどを考えて、路線バスをなくして“歩く観光”に切り替えられました。

 したがって、滞在時間が2時間程度の観光客は、龍源寺間歩には行けなくなりました。また、交通弱者にとっては不便になり、観光客が減ってしまった理由の一つです。

 しかし、石見銀山遺跡は、環境に配慮し、自然と共生した鉱山経営を行っていたことが評価され、世界遺産になっているので仕方がありません。したがって、環境を守るための歩く観光と、障がい者や高齢者の利便性を確保するための取り組みが課題になっています。

 それを受けて石見銀山では、観光客や地域の人のためにさまざまな取り組みがなされています。大森町の所々にパーキングエリアやバス停が設置され、説明板や案内板、トイレ、ライトの取り付けなども整備されました。

 このように、観光客や地域の人たちに安心して過ごしてもらえるような工夫が他にもたくさんあります。今は歩く観光になっている石見銀山ですが、きちんと住民や環境との調和も考えて、観光客も不便を感じない観光ルートを作っていく必要性を感じました。

 私は、大森の町並みが気に入りました。ゆっくり歩いてみることで、いろんなものが目に入り、ゆったりとした気持ちになります。昔の町並みと少し違うかもしれないけど、よく再現できていると思いました。自然も楽しめ、秋には紅葉が見られてとてもきれいです。

 登録後、地元では注目されて誇りに思ったり、うれしい気持ちがある半面、大勢の観光客が一度に押し寄せると雰囲気が変わるのではないかという不安もありました。

 したがって、課題の中で一番難しいのが、町のにぎわいと穏やかさの両立です。このことについて、私は「にぎやかさとは何か」「穏やかさとは何か」をじっくり考えて、二つともが合わさったものを探してみることが10周年に向けた課題だと思います。

 (中山蛍、渡邊星奈)


c2012 大田市 k009
 マスコット「らとちゃん」

 頭に揺れる小さな炎

 地域照らす願い込める


 「らとちゃん」は、石見銀山世界遺産登録5周年事業のマスコットキャラクターで、螺灯(らとう)と鉱夫の衣装がモチーフになっています。螺灯というのは、かつて石見銀山の間歩(坑道)でも使われた、サザエの殻に油を入れて火をともす明かりのことです。

 マスコット応募には全国から800点を超える作品が届きました。広島県の落合恵美さんの作品が最優秀に選ばれ、さらに名前を募集すると、大田市立長久小学校4年生(当時)の中田敬吾さんの作品が選ばれ、らとちゃんが誕生することになりました。らとちゃんには「頭に揺れる小さな炎が、人々の心や地域の未来に明かりをともす」という願いが込められています。

 生まれたばかりの「らとちゃん」は、「ゆるキャラグランプリ2012」では865体のうち105位になりました。これからも、たくさんのイベントや観光スポットなどで頑張ってほしいと思います。

(和田楓)


熊谷家住宅の地下倉をのぞき込む大田二中生
 龍源寺間歩と熊谷家住宅

 知恵や苦労に「驚き」


 班ごとに分かれていろいろな場所を見学しましたが、私にとって印象に残ったのは「龍源寺間歩」と「熊谷家住宅」です。

 石見銀山公園から龍源寺間歩まで40分近く歩いたので少し疲れましたが、龍源寺間歩に着くと疲れが吹っ飛ぶほどうれしい気持ちになりました。

 間歩とは銀鉱石を採掘する坑道のことです。坑道の壁面には当時のノミの跡が今でも残っていて、坑夫は苦労しながら掘り進み、銀を探したことが分かりました。坑道が長いのは、銀がたくさん採れたという意味よりも、昔の人の知恵や苦労の表れだと思いました。

 石見銀山には、大小合わせて600を超える間歩があります。龍源寺間歩は長さが600メートルもあるけれど、公開されているのは全体の約3分の1だそうです。しかし、思ったより距離があったので驚きました。

 熊谷家住宅は重要文化財で、有力な商人が住んでいた、とても広い家です。特に地下倉は意外に深くて広かったので、「すごいな」と思いました。熊谷家は、銀山役人を務めたり、家業である鉱山業や酒造業ととともに、年貢銀を秤量(ひょうりょう)・検査する掛屋をしていました。

(中山蛍)


大田市役所石見銀山課でインタビューする取材班

 大田の歴史や自然一体化

 一つのミュージアムに


 大田市役所石見銀山課では、遺跡を守るために銀山の保護や保全、活用、整備をしています。保存・保護は、今ある姿をそのままに残すことで、活用は体験学習の提供を行います。整備は間歩を整備したり、古い形、昔の姿に戻すことなどを主にしています。

 登録後の石見銀山で新たに発見されたものに、20余りの間歩があります。さらに調査すれば、多くの間歩が見つかる可能性が高いそうです。林課長は「これからも銀山の最盛期の様子を解明できるように、継続して調査を行っていきたい」と熱く語られました。

 また、観光振興課の楫野さんは「観光客の方に石見銀山だけでなく、大田市全体の良いところも見てもらいたい」と力説されました。そのために「石見銀山ウオーキングミュージアム」構想を打ち出して、大田市に根付く歴史や自然などを一体化し、一つのミュージアムと見立てるまちづくりを進めていくそうです。

(中村優紀)



 観光客に突撃インタビュー

 「間歩」が一番印象的


 石見銀山研修では、観光客32人の方に突撃インタビューを行い、石見銀山アンケートに協力していただきました。その結果、この日の観光客は東京都8人、大阪府4人、埼玉県4人など、多くは都会から来ていることが分かりました。また、地元の島根県からはわずか2人でした。

 訪問回数を聞くと、リピーターは6人、初めて来た人は26人にのぼりました。大森町の印象を尋ねると、「古い町並みや歴史があり、たたずまいが美しい」「町全体に風情がある」「町に癒やされる」「自然がいっぱい」といった意見が多くありました。中には「時が止まっている」「昭和30年代の日本」など、タイムスリップした気分に浸る人もいました。

 また、「石見銀山の何に興味があるのか」と質問すると、多くの人が古い町並みや間歩に興味があるという回答でした。さらに、坑夫の「短い寿命の実態」や「昔の人の仕事ぶり」に関心を持っている方もいました。

 また、既に見学を終えた方は、石見銀山で間歩が一番印象に残ったと話す方が多かったです。そして、「また来たい」という声も多く、リピーターとしても期待ができそうでした。

 これらのアンケートから、観光客の方は「石見銀山のメーンは間歩」といったイメージを持ち、「町の人が親切」という印象を持っていることも分かりました。

 突撃インタビューで取材した方(32人)の居住地

 東京都8人、大阪府・埼玉県各4人、愛知県・三重県各3人、栃木県・神奈川県・島根県各2人、岩手県・茨城県・千葉県・奈良県各1人

(渡邊星奈)



取材班メンバーの和田楓、中山蛍(前列左から)、渡邊星奈、中村優紀(後列左から)

 編集後記

 文章を書くのに苦労したけど、この新聞を作ったことで、今まで知らなかったことや友達と協力するということを学ぶいい機会になりました。

 観光客へのインタビューでは、たくさんの方が石見銀山のことをほめてくれたのでうれしかったです。市役所でのインタビューでは、私たちが知らない石見銀山のことをたくさん聞かせてもらったので、いい経験になりました。これらはこれからの生活に生かしていきたいと思います。

 そして、これからも石見銀山を大森町の人と一緒に大切にして、世界に誇れる石見銀山をたくさんの方に見てもらいたいです。また、大田市には石見銀山の他にもたくさんいい所があるということも知ってもらいたいと思います。

2013年1月29日 無断転載禁止

こども新聞