(28)大井谷の棚田(吉賀)

四季折々に美しい景観をつくる大井谷の棚田(2012年10月撮影)
 補修重ね600年受け継ぐ

 吉賀町柿木村白谷の国道187号から西へ上ると、山肌を階段状に刻む棚田が見えてくる。標高350メートルにある大井谷地区。無造作に積み上げ形成された岩垣の雄大な風景は、日本の棚田百選に認定されている。

 古くは室町時代から藩政時代にかけて築かれ、約600年の間、幾度の補修や積み直しを経て、現在に引き継がれてきた。山から下りてくる養分を含んだ雨水を緩やかに下流へ運ぶ。

 収穫される棚田米は江戸時代、津和野藩主に献上された歴史がある。日当たり良い南向きの斜面、昼夜の気温差などの好条件で生まれる自然の恵み。道の駅などで販売され、人気が高い。

 ただ、現実は厳しい。同地区は18戸70人程度の集落。棚田の水田面積は30年前の17ヘクタールから8ヘクタールに減少し、作付面積も減反政策、農家の高齢化、米価の低迷で6ヘクタールまで落ち込んでいる。

 景観の保全を目指し、地元住民が立ち上がったのが1998年4月。棚田を活用した地域づくりを推進する組織「助(たすけ)はんどうの会」を結成した。干ばつ時、沢の水をためる役割を果たし、住民を助けたとされる直径1・2メートルの現存する石(助はんどう)が名前の由来だ。

 同会は棚田米の販路拡大をはじめ、農作業を体験できる棚田オーナー制度、景観保全の資金援助に新米提供で応えるトラスト制度、収穫に感謝する棚田まつりの継続開催に力を尽くしている。

 三浦隆文会長(66)は「先人から伝わる貴重な資源。住民一丸となって守っていきたい」と話した。

2013年1月17日 無断転載禁止