島根ふるさと遺産100選 (1)神話と歴史

 古事記の国譲り神話と神話の国・出雲を象徴する巨大神殿・出雲大社 (出雲市大社町)周辺からは多くの遺産が選ばれた。初回は、神話と歴史が脈 打つ遺産を訪ねた。

出雲と石見の境にそびえる三瓶山
三瓶山=佐比売山(大田市、飯南町)

 島根県のほぼ中央に位置する三瓶山。主峰の男三瓶(標高1126メートル )、女三瓶(同957メートル)、子三瓶(同961メートル)、孫三瓶(同 907メートル)が環状に連なる。

 三瓶山は10万年前から、これまでに7回の活動期を迎えた。最後の活動期 が4千年前で、このときの噴火で形成したのが三瓶山北側に位置する「三瓶小 豆原埋没林」。縄文時代の杉の巨木を中心とする森林が、直立した状態で残る 、世界でも例を見ない規模の埋没林だ。

 発掘された立ち木は、根元の直径が2メートルを超え、高さは40~50メ ートルに達したと推測される。太古の自然を現代に伝える貴重な遺産で、国の 天然記念物に指定されている。

 出雲国風土記では佐比売(さひめ)山として登場する。国引き神話で、朝鮮 半島の新羅(しらぎ)から杵築の地を引き寄せた綱をつなぎ留めたくいが佐比 売山とされる。

 三瓶山には悠久の歴史と神話ロマンが今も息づく。


国宝の出雲大社本殿
出雲大社と門前町(出雲市)

 60年ぶりに遷宮が進む出雲大社(出雲市大社町杵築東)。5月10日には 祭神・大国主命(おおくにぬしのみこと)を仮殿から本殿(国宝)に移す本殿 遷座祭が行われる。「平成の大遷宮」の主要な祭儀が間近に迫る。

 2000年には境内から宇豆柱(うづばしら)など巨大柱が出土。古代の平 安時代、本殿の高さが現在の倍の約48メートルだったとする社伝が現実味を 帯びてきた。国譲りの代償が高層神殿とする神話と合わせ注目度は増すばかり だ。

 現在の本殿は1744(延享元)年に造営され1809(文化6)年、18 81(明治14)年、1953(昭和28)年に遷宮があった。平成の大遷宮 の総事業費は80億円に上る。

 遷宮を門前町のにぎわい創出の好機と捉えるのが、神門通りの商店主らでつ くる「神門通り甦(よみがえ)りの会」。同会の働きかけにより、遷宮開始の 前年に当たる2007年以降、神門通りに40を超える新規出店が実現した。 田辺達也代表(55)は「この流れを10年後につなげなければ」とさらなる 活性化を目指す。


出雲大社神楽殿の大しめ縄
大しめ縄と制作技術(飯南町)

 出雲大社の神楽殿に、ひときわ目を引く大きなしめ縄がある。昨年7月に奉 納され、全長13・5メートル、重さ4・4トン。日本最大級だ。参拝者は見 上げて、大きさに圧倒される。

 大しめ縄を作ったのは「飯南町しめ縄クラブ」。住民有志の組織で1981 年に初めて出雲大社に奉納し、今回が6度目。6~8年ごとに手掛けている。

 本殿遷座祭に向けて奉納されたしめ縄は、メンバーが約3カ月かけて新調。 使われた稲わらは、実に1・5ヘクタールに及ぶ水田から集められた。綯(な )い方も独特。大国主命にふさわしく大黒締めといわれ、通常の右と異なり左 からひねり始める。

 飯南町は、2013年度中に大しめ縄の制作施設を整備し、産業や観光振興 につなぐ構想を持つ。同クラブの星野敏幸代表(65)は「大しめ縄を作る時 は、町民も手伝ってくれた」と地域に支えられていることに感謝。町民ととも にクラブが信条とする「語り継ごう技と心」の継承と発展を誓う。


神話の舞台となった稲佐の浜と薗の長浜
稲佐の浜と薗の長浜(出雲市)

 出雲大社の西側に国譲り神話の舞台とされる稲佐の浜(出雲市大社町杵築北 )が広がる。古事記で建御雷(たけみかづち)と大国主が国譲りの談判をした 場所だ。ここから南を眺めると面白いことに気付く。稲佐の浜から弓状に約3 キロ延びる海岸は薗の長浜。出雲国風土記の国引き神話に登場する。国土奉還 と国土創出の舞台がつながっている。

 稲佐の浜は今も特別な地。初冬に全国から集う八百万(やおよろず)の神々 を出雲大社に迎える神迎(かみむかえ)神事の舞台になる。

 稲佐の浜から出雲大社までの道沿い一帯の約90世帯は「神迎の道の会」を 設け、代々伝わる潮汲(しおく)みを続ける。浜で汲んだ海水を家庭に持ち帰 り、玄関や神棚などにまき清め、家族の健康を願う。

 年配の人の営みを見て、2004年から月1回、会員以外、誰でも参加でき る潮汲みを始めた。同会の青木敦生代表(37)は「大社に伝わる風習に誇り を持ち、次の世代に引き継いでいきたい」と決意を示す。


 「あなたが未来に伝えたい、ふるさとの宝」と題して山陰中央新報社 は創刊130周年記念事業で、島根が誇る遺産を読者から募集し、100件が 決まった。古事記や日本書紀、出雲国風土記などにゆかりの舞台や史跡、美し い景観、伝統芸能などと幅広い。魅力に満ちた「島根ふるさと遺産100」を 隔週で紹介する。

2013年4月21日 無断転載禁止