島根ふるさと遺産100選 (3)伝統祭事

 島根県に数ある祭事や伝統行事。それぞれ独自の色彩を放ち、多くの観光客を魅了してやまない。今回選ばれたものもその中の一つで、古くから愛され、地元で育まれ続ける。

白潟天満宮の夏祭りで、威勢の良い掛け声に合わせ練り歩くみこし
白潟天満宮の夏祭り(松江市)

 学問の神様・菅原道真を祭る松江市天神町の白潟天満宮。毎年7月には「天神さん夏祭り」があり、勇壮なみこしが繰り出し、にぎわう。

 松江開府の祖・堀尾吉晴が、富田城(現在の安来市広瀬町)から城を亀田山(現在の松江城)に移す際、富田城内の鎮守天満宮を白潟に移したのが白潟天満宮の始まりとされる。

 3月25日の祈年祭、7月25日の例大祭、10月25日の新嘗祭(にいなめさい)が三大祭とされ、このうち例大祭は24日に前夜祭が行われる。

 昨年の前夜祭には約1千人の男女が参加、7基のみこしを担ぎ、練り歩いた。松江市殿町の松江城山公園を出発したみこしは「ソイヤ」「サー」と威勢の良い掛け声を上げ、天満宮を目指した。沿道には、勇壮な姿に見入る浴衣姿の市民らが並び、熱気に包まれた。

 受験シーズンには、天満宮で合格祈願を受けた高速バスの切符が売り出されるなど、受験生にとっては力強い存在でもある。


シラサギを模した衣装をまとった役者が舞う鷺舞
鷺舞(津和野町)

 雄雌のシラサギを模した衣装をまとった役者2人が向かい合い、太鼓や鐘、笛が奏でるゆったりとした囃子(はやし)に合わせて扇状に大きく羽を広げると、夏の強い日差しが照りつける城下町の石畳に、優雅に舞う鷺(さぎ)のシルエットが浮かぶ。

 津和野町の弥栄神社に伝わる鷺舞は毎年7月20、27日に町中心部で営まれる神事。戦国期の津和野城主・吉見正頼が1542(天文11)年、疫病鎮護を願い、京都の八坂神社から山口に伝わった舞を移入したのが始まりとされる。1994年、国重要無形民俗文化財に指定された。

 舞方、囃子方、唄方の総勢20人で組織する一行は、殿町通りなど町内11カ所で見物客を魅了。その所作は日本の代表的な古典芸能として評価が高く、5月12日の出雲大社本殿遷座奉祝祭でも披露される。

 地元出身の23~77歳の約40人で継承に取り組む津和野鷺舞保存会の吉永康男会長(73)は「舞い姿だけでなく、郷土愛に満ちた精神も伝えていきたい」と意欲を燃やす。


勇壮な水上絵巻を繰り広げるホーランエンヤ
ホーランエンヤ(松江市)

 宮島(広島)の管絃(かんげん)祭、大阪天満宮の天神祭と並び日本三大船神事とされるホーランエンヤ(松江城山稲荷神社式年神幸祭)。櫂(かい)伝馬船など約100隻が列をなし、豪華絢爛(けんらん)に水都・松江を彩る。

 神事の始まりは1648年。大凶作を心配した松江藩初代藩主・松平直政が、城山稲荷神社の神霊を船で阿太加夜(あだかや)神社に運び、豊作を祈願したのが起源とされる。

 「五大地」と呼ばれる地域ごとの櫂伝馬船が、色とりどりの装飾を施し、華麗な水上絵巻を繰り広げる。船首に陣取る剣櫂(けんがい)と船尾の采(ざい)振りは、それぞれ歌舞伎役者と女形を思わせ、一糸乱れぬ踊りを披露する。長さ1メートルほどの櫂を剣のように操る姿は、見る者を魅了する。

 2009年5月にあった神事の見物客は、主催者発表で36万5千人だった。昨年10月には松江ホーランエンヤ伝承館(松江市殿町)が完成し、後世に継承する体制が整った。次回の開催は19年になる。


独特の仮面を着け舞を披露する蓮華会舞
蓮華会舞(隠岐の島町)

 平安時代から伝わる雅楽の音色に合わせ、独特の仮面を着け舞を披露する「隠岐国分寺蓮華会舞(れんげえまい)」。毎年、弘法大師の命日に当たる4月21日に隠岐国分寺(隠岐の島町池田)の本堂前庭に設置される特設舞台で奉納され、大勢の島民や観光客らでにぎわう。

 舞は、菩薩(ぼさつ)の面を着けて2人の子どもが踊り出す「眠り仏」で幕開け、農作業をユーモラスに再現する「麦焼」、頭上に竜をほどこした面で勇壮に舞う「竜王」など7演目が披露される。

 明治政府の廃仏毀釈(きしゃく)で一時廃れたが1884(明治17)年に復興し、1974年に保存会が結成された。2007年に隠岐国分寺の本堂が全焼し、面・衣装や道具一式が焼失する災難に遭ったものの、保存会が奔走し同年11月にはすべて復元した。

 12年5月に6代目の保存会会長に就任した浅生久さん(58)は「現在は子どもたちが熱心に取り組んでいる。将来的には後継が心配な面もあるが正しい踊りを後世に伝えたい」と話す。


2013年4月30日 無断転載禁止