紙上講演 作家・ジャーナリスト 莫邦富氏

作家・ジャーナリスト 莫邦富氏
対立越え新たな日中関係構築を

人、ソフト面の交流必要

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が14、15の両日、松江、米子市内でそれぞれ開かれた。作家・ジャーナリストとして日中関係を長年取材している莫邦富(モーバンフ)氏(60)が「対立越え新たな日中関係構築を~平和のための努力は放棄しない~」と題し、冷え込んだ日中関係の打開策を探った。要旨は次の通り。

 中国で反日デモが起きた昨年9月、日本商品の不買を訴えるデモ隊の若者を取材した。私の妻が(中国から)初めて来日した1981年、土産でテレビを持ち帰ると、近所の人が集まってきたという。当時、多くの中国人が「日本はすごい」と感心したものだが、最近は日本のブランド力が低下し、日本商品の「不要論」が出始めた。

 69年に、旧ソ連と中国の国境にある珍宝島の領有をめぐって激しい軍事衝突が起き、私も翌年、兵士として現地に派遣された。目の前のソ連軍を見て「衝突が再度起きれば死ぬ」と悲壮感に包まれたが、40年余りたった今、ロシアとの国境線は平和裏に確定している。尖閣諸島(沖縄県)をめぐる日中関係の悪化も冷却期間が必要で、時間がたてば解決できると思う。

 日中関係をビルに例えると、築40年を経て耐震補強工事が必要な状態だ。人的交流の強化、ソフト事業の交流が必要だろう。製鉄所や新幹線といったハード面の技術交流はあったが、ヒートアイランド現象の緩和など環境対策や、新幹線の安全運行システムといったソフト面のパワーを中国は求めている。

2013年5月16日 無断転載禁止