島根ふるさと遺産100選 (8)渓谷美と凉

真夏に向かう季節。今回は凉と癒やしを堪能できる、自然がつくり出した渓谷美などを紹介する。

日本の滝百選選定の龍頭が滝の雄滝
龍頭・八重滝と雲見の滝(雲南市)

 中国山地に抱かれた雲南市に名瀑(めいばく)と呼ばれる三つの滝がある。日本の滝百選選定の龍頭が滝と八重滝(いずれも同市掛合町)、県の名勝天然記念物の雲見の滝(同市三刀屋町)だ。深山に現れる自然美に、涼を求める行楽客が行き交う。

 落差40メートルの雄滝と滝の裏の大きなほこらが特徴的な龍頭が滝。滝つぼは周囲の緑に映え、夏の日差しに光る水の帯を間近で感じられる。名馬「池月」にちなむ伝説も残り、神秘的な雰囲気を感じさせる。

 龍頭が滝と合わせ、1990年に日本の滝百選に選ばれたのが八重滝。八つの滝が約1・5キロの渓谷に点在し、秋の紅葉など美しい景観が人気。最上流で二段構えになった八汐滝、八塩滝は落差40メートルで豊富な水量を放つ。

 二つの滝は近年、来訪者が増え、昨年は合計で約8万人が訪れた。

 雲見の滝も落差30メートルの雄滝と20メートルの雌滝で構成。滝近くに高さ100メートルの絶壁「屏風岩」が直立し、二つの滝とは別の趣を伝えている。

切り立った岩と清流が独特の渓谷美を生む立久恵峡
立久恵峡(出雲市)

 出雲市の中心部、JR出雲市駅から十数キロ。車を南に20分ほど走らせれば、太古の自然が生み出した雄大な景観に触れることができる。同市乙立町の立久恵峡は、神戸川の清流に沿って、切り立った奇岩が連なる渓谷だ。

 烏帽子(えぼし)岩、ろうそく岩、屏風(びょうぶ)岩、天狗(てんぐ)岩…。約2キロにわたって高さ100~200メートルの岩壁が続く渓谷美は、川の流れによる浸食や風化によってできたという。四季折々に異なる表情を見せ、国の名勝・天然記念物、県立自然公園に指定されている。

 三つのつり橋のうち、下流側の不老橋と浮嵐(ふらん)橋の間は、中国自然歩道として回遊型の遊歩道が整備され、自然観察モデルコースになっている。散策すれば、さまざまな植物や鳥、魚に出合えそう。

 2006年7月の豪雨では、つり橋が崩壊するなど大きな被害を受けた。レクリエーション施設の「わかあゆの里」も壊滅的な状況に陥ったが、キャンプサイトやオートキャンプ場を備えて11年5月に復活。立久恵峡の魅力に触れる拠点の一つになっている。

自然がつくり出した絶景で、国名勝に指定されている断魚渓
断魚渓(邑南町)

 日本五大稲荷(いなり)の一つ、太皷谷稲成神社。朱色に染まった鳥居や社殿が、津和野の城下町を眼下に眺める太皷谷の峰に浮かぶ。

 隆起した流紋岩が浸食されてできた峡底の岩盤「千畳敷」の上に立つと、下流右手に高さ約80メートルの巨岩「楯巌(たてかがら)」、左手には人が簑(みの)を着たような形の奇岩「箕腰(みのこし)」がそびえる。断魚渓は江の川支流の濁川(にごりがわ)がつくり出し、3・6キロにわたり自然の造形美が楽しめる。1935年に国名勝に指定された。

 高低差120メートルの厳しい渓谷で、急流がアユなど魚の遡上(そじょう)を遮ることから名が付いた。地元の漢学者野田慎(1844~99年)が1875年、たたら製鉄の衰退を受け、村の経済振興を図ろうと、特徴的な淵(ふち)や岩、滝などを選んで「断魚渓二十四景」を定め、景観美を全国に紹介した。

 春は新緑、秋は紅葉など四季折々で表情を変え、年間9万人が訪れる観光地として親しまれている。1964年には県立自然公園にも指定された。

 先人の思いを受け継ぐ地元団体「断魚開発組合」が、遊歩道の管理やガイドに取り組んでいる。

ひんやりとした空気を味わえる八雲風穴
八雲風穴(出雲市)

 出雲須佐温泉や須佐神社など魅力的なスポットが点在する出雲市佐田町にあって、夏季の避暑スポットとして人気を集めるのが、同町朝原の「八雲風穴」だ。

 冷気の秘密は、固まった溶岩の隙間を流れる空気が、地下水で冷やされ地表に吹き上がることにある。石垣の片隅に作られた小さな扉を開けると、ひんやりとした空気に包まれるのはそのためだ。

 冷気で農産物を保管する地上1階、地下3階の木造施設があり、中は真夏でも5~10度に保たれる。入ることができるのは地下1階と2階。地下は深さが約8メートルあり、下に行くほど狭く、寒くなる。

 風穴を管理する住民有志が立ち上げた団体「風太郎」の勝部秀雄会長は「明治初期に石垣が建てられ、1985年にその上に建物ができた」と話す。

 昨夏に、本格的に公開を始めた1989年夏以降の有料入場者が40万人を突破。2011年からは5月の大型連休中も公開している。今年は6日に一般公開が始まり、9月8日まで営業し、天然のクーラーを堪能できる。

2013年7月9日 無断転載禁止