レッツ連歌(下房桃菴)・8月8日付け

挿絵・FUMI
◎ても恐ろしき執念じゃなあ

ニャーオンと床の三味線鳴くそうな
               (大田)柴 わん子

レッツ連歌星取表の作成者   (松江)本田  章

三浪をしても東大まだ受ける  (松江)野津 重夫

アスファルト破って伸びるド根性(美郷)源  瞳子

死んだ人からも税取る保険庁  (江津)井原 芳政

今年こそ巨人倒せと浪花っ子  (出雲)原  愼二

週刊誌丸めて覗(のぞ)く袋綴(と)じ
               (益田)石川アキオ

孫たちにおばあちゃんとは呼ばせない

               (出雲)石飛 富夫

楽日までお岩稲荷に日参し   (益田)石田 三章

ジグソーの二千ピースは二年越し(雲南)難波紀久子

二日分数えることもあるそうな (益田)吉川 洋子

シングルでオリンピックをめざします
               (益田)竹内 良子

金持ちは使いたいより隠したい (松江)永瀬 秋風

一匹を追ってスプレー撒(ま)きつくし
               (浜田)松井 鏡子

寝言でも九九くりかえす二年生 (松江)相見 哲雄

円周率十万桁まで暗記して   (松江)庄司  豊

スカートのホックを外すバイキング
               (出雲)原  陽子

体中おもりを付けてウオーキング(松江)木村 敏子

九十九でモンブランから滑り降り(松江)田中 堂太

着ぐるみを着けて夫の後を追い (松江)佐々木滋子

昨日まで這(は)っていた子が今日は立ち
               (浜田)勝田  艶

玄関にクモは毎朝巣を掛けて  (松江)岩田 正之



 こんなこと、どうしたら思いつけるのか。連歌はフィクションとはいうものの、実体験がなければ、とてもムリな発想でしょう。「週刊誌丸めて」といっても、ただ丸めるのではない。ことばでは説明しがたいしかたで丸める。で、そうして苦労して覗いたとして、でも、せっかくの美女が、メッチャゆがんで見えません? わずかな金を払って、買って帰ったほうがよっぽど早いと思うのですが…。それでもしつこく「立ち覗き」している人の姿を、みなさん、もし本屋で目撃されたら、それはアキオさんに違いありません。

 落語にも怪談噺(ばなし)がいろいろありますが、上方落語の怪談は、実は、ちっとも怖くはない。たとえば、「七度狐」―。死んだ金貸しの婆さんが、この世に気が残ったかして、棺桶(かんおけ)の蓋(ふた)を跳ね上げては、「金返やせ~、金返やせ~」。ところが、この婆さん、目の前の二人が伊勢参りの旅の衆だと分かると、急に気を変えて、「伊勢音頭を歌え~」。なんでぇナと思いますが、それはともかく、二人が震え震え、「お伊勢七た~び、熊野にゃ三~度」と歌いだすと、婆さん、すかさず「ヨーイ、ヨイ」。ほんとは陽気な人だったのですね。

 「皿屋敷」のお菊さんものんきなタチで、「二日分読んどいて、あしたの晩、休みまんねん」というのが、この落語のオチ。洋子さんの句は、これを踏まえた作品でした。

 ウオーキング用のおもりというのは、最近は通販なんかでも売られているようですが、写真を見ると、どれも刑具を連想させますね。敏子さんの句、ちょっとマゾヒスティックな感じもしますが…。お差し支えがあれば、お許しください。

 滋子さんの句は、浮気調査でしょうか。それにしても、尾行するには、いささか目立ちすぎやしませんか。

 さっきまで這っていた子が、ふいと立ち上がる、なるほどこれも、「執念」といえば「執念」。艶さんの句、子育てをした人なら忘れられない感動の一瞬を、みごとに表現してくださいました。

   ◇

 次の前句は、

  春はあけぼの秋は夕暮れ

 『枕草子』の冒頭が有名ですが、いろんな意味に取ることができそうです。楽しい五七五をお願いします。

(島根大名誉教授)

2013年8月8日 無断転載禁止

こども新聞