島根ふるさと遺産100選 (14)秋を代表する風景

猛暑を経てようやく実感できる秋の気配。実りの秋や錦秋など、秋の風景を特集する。

独特の散居景観を形成する築地松
築地松(出雲市)

 島根県東部の出雲平野に点在する築地松は、強風や水害から住宅を守ってきた。凛(りん)としたたたずまいは家屋に風格を生み、富山の砺波平野、岩手の胆沢平野と並ぶ日本三大散居村の一つとされる独特の景観を形成する。

 江戸時代ごろ、斐伊川の氾濫から住宅を守るため、豪農が盛り土をし、根が良く張り、水や風に強いクロマツを植えたのが始まりといわれる。

 松の高さは10メートルにもなる。枝を網目状に刈ることで風や日光をほどよく取り込む。そのおかげで家屋は夏は涼しく、冬は暖かい。樹勢を保つため、4~5年に1回、「陰手刈(のうてご)り」と呼ばれる剪定(せんてい)が行われる。はしごを松に掛け、片手に持った長柄の鎌で枝を落とす。

 かつて枝を風呂や台所の燃料に使うなど、生活に密着してきた築地松だが、松くい虫被害などにより、本数は約1万本、所有世帯は約1500戸と、1999年に比べ半減したが、築地松を残すべきだとの声は大きい。全国に誇れる地域資源の維持、再生へ懸命の取り組みが続く。

奥出雲町八代ののどかな山間地を疾走するJR木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」
JR木次線のトロッコ列車(雲南市、奥出雲町)

 JR木次線木次-備後落合間(60・8キロ)では4月から11月、窓がなく開放的なトロッコ風客車を連結したトロッコ列車(定員64人)が豊かな自然と神話の里奥出雲を疾走し、晩秋の紅葉が観光客やマニアを楽しませる。

 その名も「奥出雲おろち号」。3両編成で、白と青のツートンカラーに星を描いた車体が特徴。今年5月、運転15周年を迎えた。乗客は2012年度までに26万人を数える。

 トロッコ車からは中国山地の山並みや田園風景がじかに堪能でき、窓ガラス越しの景色と趣を異にする。走行中、伸びた小枝やススキの穂が乗客の顔や腕をなぞり、トンボが車内に入ることも。

 日影にさしかかると、ひんやりとした風が当たる。「ゴーッ」と、トンネル内を走行する時の車輪の音は、ヤマタノオロチの咆哮(ほうこう)を思わせる。

 各駅停車で金、土、日曜日と祝日に1日1往復運転(紅葉シーズンは毎日)。本年度は11月24日まで。

吉賀町柿木村白谷の「大井谷の棚田」
大井谷の棚田(吉賀町)

 吉賀町柿木村白谷の「大井谷の棚田」。古くは室町時代から藩制時代にかけて築かれ、約600年の間、幾度の補修や積み直しを経て現在に引き継がれてきた。山肌を階段状に刻んだ雄大な風景は、農林水産省の「日本の棚田百選」に認定されている。

 収穫される棚田米は江戸時代、津和野藩主に献上された歴史を持つ。日当たりの良い南向きの斜面、昼夜の気温差、山から下りてくる養分を含んだ雨水などの好条件で生まれる自然の恵みだ。道の駅などで販売され、人気が高い。

 1998年4月、景観保全と棚田を活用した地域づくりを推進しようと、住民組織「助(たすけ)はんどうの会」が結成。その名は、干ばつ時、沢の水をためる役割を果たして住民を助けたとされる直径1・2メートルの現存する石(助はんどう)にちなむ。農作業を体験できる棚田オーナー制度や、収穫に感謝する棚田まつりを通じて都市部との交流、棚田米の販路拡大に努めている。

すだれのようにつるされた干し柿
干し柿(松江市)

 標高150~200メートルの山間部に位置する松江市東出雲町上意東の畑地区。寒暖差が大きく、西条柿を栽培するのに適した土地だ。この柿を使った干し柿は「まる畑」の名で、山陽方面を中心に年間約40万個が出荷されている。

 毎年11月になると各農家で収穫作業が始まる。皮はぎした柿をすだれのようにつるし、寒風にさらす。時間とともに乾燥した柿は、あめ色へと変化して甘みを増す。

 畑地区の農家には、柿をつるすガラス張りの木造小屋がある。晴れた日は窓を開け風通しを良くし、雨が降ると窓を閉める。晩秋の自然を相手に最高の干し柿を目指す。

 生産者でつくる畑ほし柿生産組合は、2009年から柿の木オーナー制度を開始。県内外から希望者を募り、干し柿の里の魅力を広くアピールする取り組みを進めている。

 今年3月には食品農業センター(東京都)の「本場の本物」にも認定され、400年以上の歴史を持つ干し柿は高い評価を得た。

2013年10月15日 無断転載禁止