島根ふるさと遺産100選 (15)遺跡と城、古刹

戦国時代から栄枯盛衰の歴史を刻む石見銀山遺跡と月山富田城、鰐淵寺と清水寺の島根を代表する二つの古刹(こさつ)を紹介する。

石見銀山遺跡の世界遺産登録から6年を迎えた大田市大森町の町並み
石見銀山遺跡と周辺の町並み(大田市)

 大田市の世界遺産・石見銀山遺跡は、1526年、博多の豪商・神屋寿禎によって再開発されて以来、約400年にわたって採掘された日本を代表する鉱山遺跡。豊かな自然環境と一体となった貴重な文化的景観を形成している。

 16世紀半ばから17世紀前半の全盛期には、世界の産出銀の3分の1を占めた日本銀のうち、相当部分を産出したとされる。環境に配慮し、自然と共生した鉱山経営が行われていた。

 遺跡は、銀鉱山跡、銀を積み出した港と港町、銀山と港をつなぐ街道などで構成され、2007年に国内では14件目、鉱山遺跡としてはアジア初の世界遺産に登録された。

 遺跡の中核をなすのが同市大森町だ。

 有力な商家として栄えた国指定重要文化財の「熊谷家住宅」や武家屋敷の「旧河島家」、拝殿の天井に描かれた「鳴き龍」で知られる「城上神社」などが立ち並ぶ。武家屋敷と商家が混在している所が特徴で、奥深い歴史を感じさせる。

間もなく境内が紅葉に彩られる鰐淵寺
鰐淵寺(出雲市)

 出雲市別所町の古刹・浮浪山鰐淵寺は594年、智春上人(ちしゅんしょうにん)が開いたとされる天台宗の寺院。川のせせらぎに耳を傾けながら林道を行くと、静寂の中、石段の先に根本堂がたたずむ。

 弁慶伝説で知られ、1151年、松江市に生まれた弁慶は18歳から3年間、同寺で修行したと言われる。国の重要文化財指定を受ける釣り鐘は、弁慶が鳥取県大山町の大山寺に出向いた際、101キロの山道を一夜にして担いで帰ったとされる。

 毎年10月の最終日曜には地元住民らによる弁慶まつりを開催。屈強な体格の若者が弁慶に扮(ふん)し、伝説にちなんで釣り鐘を背負い、林道や境内を練り歩く。

 早朝の滝打ちに始まり、芋がゆを平らげる汁のみの行、大慈橋で声を張り上げ無事の帰着を報告する願行、石段を百八つ数えて上る煩悩の行などを道中で行い、弁慶の豪快な生きざまを再現する。

 島根県内有数の紅葉の名所としても知られる同寺。11月中旬から下旬にかけ、イロハモミジが境内を赤一色に染め上げていく。

清水寺のシンボル的存在にもなっている三重塔
清水寺(安来市)

 天台宗の古刹で587年に開かれたとされる清水寺(安来市清水町)。鬱蒼(うっそう)と茂る木々に囲まれた約5万坪の境内には、根本堂(本堂)や三重塔など国、島根県指定の重要文化財などが数多くある。

 本堂(国指定重要文化財)は戦国時代の兵火を免れた600年以上前の建物で、屋根最上部の高さは約15メートル。本尊の木造十一面観世音菩薩像(同)は「厄払いの観音様」として信仰を集める。

 本堂の左手を進むと、山陰唯一の多重塔である三重塔(島根県指定文化財)が現れる。高さ33.3メートルの総けやき造りで、幕末の1859年に完成した。周囲より高くそびえ立ち、姿も美しいことから清水寺のシンボル的存在になっている。

 県立自然公園の景勝地としても知られ、三重塔を背景にソメイヨシノが咲き誇る春と、境内が深紅に染まる秋は圧巻。紅葉の見頃は11月中旬で、カエデやイチョウが趣深い古寺のたたずまいを鮮やかに彩る。

月山中腹にある富田城山中御殿跡
月山富田城(安来市)

 標高約190メートルの月山を中心とした月山富田城跡(安来市広瀬町富田)。戦国時代に中国地方に一大勢力を築いた尼子氏の居城で、悲運の武将・山中鹿介を輩出した城としても知られる。

 富田城の始まりは12世紀後半とされ、因幡や石見、備後など陰陽11カ国を支配したとされる尼子氏によって最盛期を迎える。1566(永禄9)年に毛利元就の侵攻で尼子氏が開城して以降は、毛利氏や吉川氏、堀尾氏と城主が交代。1611(慶長16)年に堀尾氏が松江城を築いて移るまで、山陰地方の中心的な城となった。

 山頂に本丸を置き、曲輪や石垣、土塁などを配した大規模な難攻不落の堅城で、1934(昭和9)年には歴史的、学術的価値の高さが認められ、国史跡に指定された。

 安来市は城跡を生かした地域振興を強化しようと、2014年度末までに富田城跡の保存管理計画を策定。史跡価値を明確化し、地域活性化につながる整備計画をつくる方針。

2013年10月29日 無断転載禁止