山陰心象録(3) 浮島現象(松江市玉湯町)

宍道湖の夕景の中に現れた蜃気楼=松江市玉湯町から撮影
 夕景背に浮かぶ出雲空港

 寒さが身に染み始めた秋の日、風のない宍道湖に蜃気楼(しんきろう)が現れる日がある。南岸の松江市玉湯町あたりから、超望遠レンズを西岸に向けると、出雲空港(出雲市斐川町沖洲)の建物が、湖面に浮かび上がった。陸地が浮いた島のようにも見えるため「浮島現象」と呼ぶ人もいる。

 秋の蜃気楼は、温かい湖水に接した空気と、上部の冷たい空気の間に層ができるため起きる。光の屈折の加減で、湖の向こうにある建物などが浮いたように見える。

 春先は、冷たい湖水と温かい空気の影響で、秋とは逆の屈折が起きるらしいが、宍道湖では記憶が薄い。蜃気楼といえば、秋の風物詩の感が強い。

 夕日と“浮島”をセットで狙おうと、午後5時を過ぎて空が赤く染まるころ、カメラを構えた。浮かび上がった空港の管制塔に向かって飛行機の機影がフレームに飛び込んできた。その間に見える建物は、空港西にあるJA斐川町のカントリーエレベーターだ。

 鮮烈な赤に染まった“浮島”はかすかに揺らいで見えた。懸命にシャッターを切るうちに、機影はあっという間にフレームから姿を消した。

2013年11月8日 無断転載禁止