山陰心象録(4) 出雲大社の神迎神事(出雲市大社町)

しめ縄を巡らせ、かがり火がたかれた稲佐の浜で執り行われた神迎神事。神職が祝詞をあげ、海からやって来る八百万の神々を出迎えた=12日夜、出雲市大社町杵築北
 神秘の浜染めるかがり火

 漆黒の海から稲佐の浜(出雲市大社町杵築北)に冷たく強い風が吹き抜ける。浜辺にたかれたかがり火が大きく揺れる度に、祭りの場は神秘さを増していった。

 全国の八百万(やおよろず)の神々を出雲大社(同町杵築東)に迎える神迎(かみむかえ)神事が旧暦の10月10日にあたる12日夜、執り行われた。

 神々は稲佐の浜からやって来て、19日の神等去出祭(からさでさい)まで、出雲大社の境内に滞在する。この間、オオクニヌシノミコトを囲んで、向こう1年間の縁結びや農事などを話し合う「神議(かみはかり)」が行われる。

 神々がやってくる海から浜まで全体の空間を見渡そうと、祭りの場から北へ約200メートルの小高い場所にカメラを構えた。

 神事の開始前、突然強い雨が降り出したが、15分ほどで何事もなかったかのように上がった。神事が始まり、太鼓の音があたりに鳴り渡ると、祭りの場を囲んだ人々のざわめきもやんだ。

 聞こえてくるのは絶え間なく浜に寄せる波の音。強めの風に流される黒雲の動きは、まるで生き物のようだ。

 空や海を含めた祭りの空間をファインダー越しに見ながら、5月にあった出雲大社の本殿遷座祭を思い出した。あの夜は60年ぶりの祭事が終わった途端、大粒の雨が地面をぬらした。「神々の国出雲」をカメラで追うときには、すぐそこに神がいるような感覚を時折覚える。

2013年11月18日 無断転載禁止