山陰心象録(5) 宍道湖うさぎ(松江市袖師町)

夕日を受けシルエットに浮かび上がる先頭から2番目の「宍道湖うさぎ」=松江市袖師町
 旅人誘う縁結びストーリー

 宍道湖が眼前に広がる島根県立美術館前(松江市袖師町)の岸公園は、さまざまな彫刻やオブジェが並ぶ野外ギャラリーだ。中でも今、注目されるのが、12体のウサギのブロンズ像を連続写真のように配置した「宍道湖うさぎ」だろう。

 美術館から宍道湖に向かって、後ろ足で蹴る像と前脚で着地する像を交互に配置。先頭のうさぎは、後ろ足ですくっと立ち上がり、湖面をみつめる。

 島根県が縁結びの地として、注目されるようになるころ、先頭から2番目の像について、こんなストーリーがささやかれるようになった。「西の方角を向きながら優しく触ると、良縁や幸せが来る」「宍道湖特産のシジミの殻を供えると効果が増す」。像の前に置かれた大量のシジミの殻は、ご縁や幸せを求めて島根を旅する人の多さを実感させる。

 夕暮れになって、ウサギたちの周りに家族連れが集まってきた。シジミからかすかな潮の香りを感じるほど、思い切り2番目の像に寄ってファインダーをのぞいた。

 空の色、雲の表情が刻々と移り変わる夕刻の湖畔で、レンズ越しのウサギは今にも跳ね上がりそうだった。そのうち、黒く厚い雲の切れ間から、深紅の光が差し込んでくると、ウサギは巨大なシルエットになり、画面上で圧倒的な存在感を示した。

2013年12月3日 無断転載禁止