島根ふるさと遺産100選 (18)祭事や伝統行事

 ユニークな神事として知られる萬歳楽をはじめ、県内各地に伝わる祭事や伝統行事を紹介する。

伝統を受け継ぐ出雲市内の獅子舞連合会のメンバー
出雲の獅子舞(出雲市)

 正月行事や神社の例祭などで舞われ、幸せを招くとともに疫病退治や悪魔払いとして古くから伝えられている伝統芸能「獅子舞」。日本各地で住民たちが地域ごとの特色を受け継いでおり、県内では出雲市で盛んに舞われている。

 獅子舞の起源はさまざまで、三重県伊勢市の伊勢神宮に参拝できない人の代わりに奉納したり、全国各地を巡って演舞していた「伊勢太神楽」を源流とする舞もあるという。

 保存団体が集中する出雲市内には60団体以上があり、先払い役の「番内さん」が先導するのが一つの特徴。独特の所作を持つ三谷神社投獅子舞(大津町)と、■(埼の大が立)田神社青獅子舞(園町)、宇賀神社獅子舞(口宇賀町)は、県無形民俗文化財の指定を受けている。

 正月になると町内を練り歩く姿が見られるほか、神社の例大祭では住民たちが地域の平穏や人々の幸せを祈り優美な舞を奉納。各団体が獅子舞の継承や後継者の育成に力を入れ、地域の伝統を守り続けている。

おわんを奪おうとする女性たちと客
萬歳楽(吉賀町柿木村)

 吉賀町柿木村下須地区に500年以上前から伝わる神事「萬歳楽(まんざいらく)」は、山盛りのご飯を客人に振る舞い、今年一年の収穫に感謝する。県の無形民俗文化財に指定されている奇祭だ。

 注目は2日目の「わん隠し」の儀。神事の会場を輪番制で引き受けた民家「当屋(とうや)」では、高さ8寸(24センチ)に盛られた白飯(1人前で約3合半)を準備する。

 全部食べるのがしきたりとあって、客がやっとの思いで平らげたのもつかの間、おわんを奪おうとする女性陣が登場。奪われれば強制的にもう一杯となるため、客は必死でおわんを懐に隠したり、隣の客に渡したりして、にぎやかな攻防を繰り広げる。

 重い年貢に苦しめられ、粟(あわ)や稗(ひえ)を食べて暮らした時代に「年に一度だけでいいから腹いっぱい食べてみたい」という願いが起源とされる。現在は集まった住民が一年の出来事を語り合い、地域の絆を強める祭りとして大切に引き継がれている。

一年の豊漁と無病息災を祈る伝統行事「グロ」
五十猛のグロ(大田市)

 国の重要無形民俗文化財に指定されている大田市五十猛町大浦地区の伝統行事「グロ」。地元住民が年頭に、高さ約20メートルの竹の柱を中心とする大型で独特の仮屋を設けて歳徳神を迎える。

 グロは同地区で毎年1月11日から15日まで行われる小正月の伝統行事。

 地元住民が力を合わせて竹の柱を立て、周りを竹やササで囲うなどし、直径10メートルほどの円すい形の仮屋を組み立てて歳徳神を迎え、一年の豊漁と無病息災を祈る。

 グロが行われる期間中は、子どもからお年寄りまでが仮屋に集まり、屋内に設けられたいろりを囲んで餅などを焼いて味わう。夜遅くまで歓談して過ごすという。

 仮屋は15日に解体され、各家が持ち寄った正月飾りなどとともに焼かれる。

 住民が守り伝え、特色ある小正月の行事として注目され、1995年に同市の無形民俗文化財となり、2005年に国の重要無形民俗文化財に指定された。

美田八幡宮で奉納される十方拝礼
隠岐の田楽と庭の舞(西ノ島町)

 隠岐の田楽と庭の舞は、西ノ島町の美田八幡宮(美田)と日吉神社(浦郷)の氏子によって伝承されている民俗芸能の総称。それぞれ隔年に行われ、国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 美田八幡宮では、西暦奇数年の9月に奉納され「神の相撲」「獅子舞」「田楽」の3部構成。田楽は、口伝によると、後白河天皇(平安時代末期)の時代にもたらされたという。氏子が美しい衣装を身に着け、田の諸霊を鎮める舞が披露される。

 日吉神社は、西暦偶数年の10月に奉納され「庭の舞」「神の相撲」「田楽」の3部構成。庭の舞は約800年前、近江国の領主が戦乱を避け隠岐に逃れて伝えたとされ、東遊(あずまあそび)と倭(やまと)系舞楽の要素が混入したとみられる。

 このうち、美田八幡宮と日吉神社の両地区で行われる田楽は、「十方拝礼(しゅうはいら)」と地元で呼ばれ、親しまれており、囃子(はやし)・所作・衣装に若干の違いがある。

2013年12月10日 無断転載禁止