島根ふるさと遺産100選 (20)各地の多彩な神楽

島根の地では人々が五穀豊穣(ほうじょう)や豊漁を祈り、いにしえからの神話を伝えるために神楽を演じてきた。各地の多彩な神楽を紹介する。

分かりやすい展開と派手な演出で人気の「大蛇」
石見神楽(石見地域)

 石見神楽は、古くから島根県西部に根付く伝統芸能。神社の祭礼で奉納されるとともに、民俗芸能としても発展してきた。儀礼的な性格を保ちながら、身近な娯楽として人々を魅了している。

 起源は近世以前とされるが、定かではない。神事として執り行われていたものが、神職による舞が明治時代に禁止されたことにより氏子に伝えられ、民間で広まった。

 原型ともいわれる大元(おおもと)神楽など、囃子(はやし)や舞いの動作がゆったりとした旧来型を「六調子神楽」、昭和初期までに普及したテンポの速いものを「八調子神楽」と呼び、地域によっては混在している。

 代表演目「大蛇(おろち)」のように、勧善懲悪の分かりやすいストーリー展開が多く、絢爛(けんらん)豪華な衣装も娯楽性が高い。伝統を大切にしながら、各神楽団体がオリジナル演目を意欲的に作ったり、特殊効果を使った派手な演出を取り入れたりと、進化を続けているのも大きな魅力だ。

国譲り神話を題材にした「荒神」を舞う大土地神楽保存会神楽方の会員
出雲神楽(出雲地域)

 出雲地方で現在舞われている出雲神楽は、一般的に「七座(しちざ)」「式三番(しきさんば)」「神能(しんのう)」の構成になっている。

 この特色は、江戸時代初期に佐太神社(松江市鹿島町佐陀宮内)で生まれた佐陀神能の影響を受けたもの。ユネスコ無形文化遺産に登録された佐陀神能は、1608年に同神社の神官が、能楽の形式を京から持ち帰り、神事の舞に取り入れて創作した。

 七座は、面をつけず、サカキなどの採物(とりもの)を手に舞う7種類の採物舞で、場を清める。式三番と神能は、能楽の手法を取り入れた舞。式三番は祝いの意味を持ち、神能は神話を題材としている。

 そうした特色を持たない独自の神楽もある。

 その一つが出雲市大社町で受け継がれる大土地神楽。神楽が神職によって舞われていた江戸時代から、神社の氏子たちによる「素人神楽」として続く。

 大土地神楽保存会神楽方が披露する舞は、出雲大社の門前町で盛んだった芝居興行の影響もあってか、観衆を楽しませる所作や演出が随所に見られる。

穏地神楽の一つ隠岐島後に伝わる久見神楽の巫女舞
隠岐神楽(隠岐郡)

 島根県隠岐地方に伝わる隠岐神楽は、隠岐島後(隠岐の島町)の「穏地(おち)」「周吉(すき)」、隠岐島前(西ノ島町、海士町、知夫村)の「島前」の三つに大別される。いずれの神楽も五穀豊穣や豊漁、病気平癒を願う祈?(きとう)として奉納された。

 特定の神社に属さず神楽を専業とする社家(しゃけ)と呼ばれる神楽師の家系が代々伝えてきた。明治の行政改革で廃止されたが、その後、各地で保存会などが結成され伝承されている。巫女(みこ)による儀式舞が重要な役割を果たし、古風な神がかりの形式が残る。

 舞台は約4メートル四方だが、その中の約2メートル四方の範囲で舞が奉納されるのが特徴。舞台後方には幕を垂らしてそこから演奏者が出入りし、三方に座して囃子を担当する。

 各神楽ともほぼ同様の演目を持ち共通点が多いが、内容や舞い方に若干の違いがある。また、島前は島後に比べ早めでにぎやかな囃子になっている。

 隠岐島後久見神楽保持者会会長の八幡和憲さん(84)は「もっと研さんして、後継者に受け継いでいきたい」と意欲を燃やす。

子ども神楽大会で演目を披露する土江子ども神楽団
子ども神楽(県内各地)

 島根県内では、高校生以下が舞人(まいびと)や楽人(がくじん)を務める子ども神楽も活発に活動している。伝統継承を目指す多くの若い力は、頼もしい。

 子ども神楽には、子どもだけで組織する団体のほか、一般の神楽団体の「子ども部門」として活動する形態もある。しまね文化振興財団によると、双方合わせて約150の子ども神楽が県内に存在する。このうち100以上が石見部。石見神楽はもともと若い担い手が多く、子どもたちにとっても身近な存在となっている。

 大田市長久町を拠点とする「土江子ども神楽団」は約300年の歴史があり、現在は小中学生47人で編成。同市立第二中学校3年の福間崇史君(14)は「伝統を受け継ぎ、指導にも関わりたい」と話す。

 県内各地では「子ども神楽大会」も盛んに行われている。2012年には「全国子ども神楽サミットin島根」が浜田市で開催され、県内から出演した11団体が存在感を示した。

2014年1月7日 無断転載禁止