山陰心象録(7) 大山からの日の出(境港市財ノ木町)

大山の山頂付近から顔を覗かせた日の出。光が美保湾に降り注ぎ神々しい雰囲気を醸し出していた=境港市財ノ木町の弓ケ浜から撮影
湾に降り注ぐ神々しい光

 カメラを持つ手はかじかむが、日の出前の空気はすがすがしいほどに澄み渡っていた。暗い空が徐々に赤みを帯びてくるにつれ、秀峰・大山のシルエットが浮かび上がった。

 弓ケ浜半島の美保湾展望駐車場(境港市財ノ木町)付近は正月三が日、大山の頂から上る朝日が拝める絶好の撮影ポジションになる。

 出雲国風土記の国引き神話では、弓ケ浜はまだ地続きではなく、「夜見嶋(よみのしま)」だった。古代の人々は、北陸から引っ張ってきた島根半島の美保関を大山につないだ綱だとした。

 島を地続きにしたのは日野川が運んだ堆積物。美保湾沿いになだらかに弧を描く砂浜も形成された。「日本の渚百選」に選ばれるほどの美観は、古代の人々が目にした光景よりも、神話のイメージに近いだろう。

 時間がたつにつれ、周辺に広がる雲が赤みを帯び、大山の北壁の縁がじりじりと明るさを増していった。程なく頂上小屋のある弥山付近から、鮮やかな太陽が顔をのぞかせた。

 浜はベストショットを狙うカメラマンたちや日の出の見物者でにぎわい、太陽がのぞいた瞬間からシャッター音が絶え間なく続いた。ふと横に目をやると、朝日に向かって手を合わせ大きく深呼吸する女性の姿があった。自然が届けた神々しい新年の贈り物に、気持ちを新たにしているように見えた。

(おわり)

2014年1月14日 無断転載禁止