島根ふるさと遺産100選 (22)河川、食

 流域の自然と文化を育み出雲のナイル川と呼ばれた斐伊川と、3年連続清流日本一に輝いた高津川、島根の食を彩る仁多米と匹見・日原のワサビを紹介する。

益田市匹見町のワサビ田
匹見・日原のワサビ(益田市、津和野町)

 匹見・日原のワサビは、高津川流域の最上流部にあたる西中国山地を中心に、急峻(きゅうしゅん)な山中の沢に石垣を積んだ「渓流式」と呼ばれるワサビ田で栽培され、高い品質を誇る。

 大きなものでは長さ約30センチにも成長し、生食用の高級食材として引き合いが多い。鮫(さめ)皮のおろし器ですると、新緑を帯びた色合いになる。口に入れると、強い辛味の中にほんのりとした甘みが広がる。栽培に不可欠なのは豊かな自然。中国山地に広がる広葉樹林が育む美しい水が、「東の静岡、西の島根」と賞されたワサビを生み出すのだ。

 しかし、高値で取引されたワサビも、練りワサビの台頭で価格が下落。生産者の高齢化もあり、課題は山積する。一方、栽培が盛んな益田市や津和野町には、ワサビ生産を希望するIターン者が集まる。益田市では、荒れたワサビ田の復旧活動も行われている。

 かつて、生産量も全国トップクラスを誇ったワサビ復活へ。小さな芽が出始めている。

出雲市を流れる斐伊川(空撮)
斐伊川(奥出雲町、雲南市、出雲市)

 鳥取、島根県境の船通山を源流に出雲平野を流れ、宍道湖、大橋川、中海を経て、日本海に注ぐ1級河川の斐伊川水系。宍道湖までの流路延長は75キロ、日本海までの水系総延長は153キロで、山陰最大級の河川だ。

 ヤマタノオロチのすみかとされる「天が淵」(雲南市木次町)など、流域には神話「オロチ退治」の伝承地が数多く残り、斐伊川は神話の国出雲を象徴する。

 上流ではかつて「たたら製鉄」が盛んに行われた。砂鉄採取で大量の土砂が堆積して氾濫を繰り返したが、住民が洪水の度に、人為的に川の流れを切り替える工事「川違(かわたが)え」を実施するとともに、土砂を利用して新田開発を行い、現在の出雲平野を形成した。

 さらに、昨年6月には斐伊川・神戸川治水事業の「3点セット」の一つで、洪水時に斐伊川から神戸川へ分流する斐伊川放水路(出雲市大津町-同市上塩冶町、4・1キロ)が完成。流域住民の安全、安心の確保に向け、同年9月には初めて分流した。

3年連続清流日本一に輝いた高津川。心豊かな風景と自然の恵みをもたらす(資料)
高津川(吉賀町、津和野町、益田市)

 島根県西端を流れる1級河川・高津川は3年連続清流日本一に輝いた。四季を通じとうとうと流れる川は、心豊かな風景と自然の恵みをもたらすふるさとの誇りだ。吉賀町を水源とし津和野町、益田市を蛇行しながら流れ日本海へ注ぐ。延長約81キロ。2010年から3年連続して全国河川水質ランキングで1位に選出された。

 古くから川がもたらす恵みのうち最も有名なのがアユ。香気豊かで気品高い味は全国に知られ食通をうならせる。漁解禁の毎年6月1日、全国から「太公望」が訪れ竿(さお)を並べる。アユとともにツガニも季節の食卓を彩る。

 水源は吉賀町田野原の大蛇(だいじゃ)ケ池。毎年6月、地元保存会が池でヤマタノオロチ伝説にちなむ雨乞い神事を営む。わらの竜を担ぐ神事は、住民の川への畏敬(いけい)の念を今に伝える。

 清流日本一を守ろうという流域住民の意識は年ごとに高まる。環境学習などを通して川に親しみ「清流を後世に伝えたい」という思いはひとつだ。

食味の良さで定評がある仁多米のおにぎり
仁多米(奥出雲町)

 仁多米は仁多郡奥出雲町産のうるち米、もち米、酒米の総称。たたら製鉄の原料・砂鉄の採取跡にできた棚田が広がる土地で古くから米作りが行われてきた。代表品種はコシヒカリ。ふっくらとして、歯応えのある弾力と粘り、かむほどに増す甘さとうま味が特徴で、炊きあがった粒の輝く白さが美しい。

 うまさの要因は肥沃(ひよく)な土壌と斐伊川源流のミネラル豊富な水、標高300~500メートルと昼夜の温度差が大きい土地。良質な米作りを目指し、水田にクマザサや稲わらを食べさせた奥出雲和牛の完熟堆肥を施している。

 昨年、町100%出資の第三セクター奥出雲仁多米が出品したコシヒカリが、第15回米・食味分析鑑定コンクールで最高位の国際総合部門で4年連続5度目の金賞を受賞。仁多米の13年度生産量は、1437ヘクタールで約7200トン。生産者の高齢化や夏場の異常高温など栽培環境は厳しいが、町は減農薬などの安全、安心な消費者に信頼される米作りを推進する。

2014年2月4日 無断転載禁止