映画プロデューサーのささやかな日常(2)

映画「はじまりのみち」の撮影現場(©はじまりのみち製作委員会)
 えっ?監督までやっていただけるんですか?

     うれしい“逆オファー”

 前回に引き続き、プロデューサーの仕事についてもう少しご説明を。撮影や照明などとは違って特別な技能は必要なく、各パート同士の“仲人”のような立ち位置で仕事を進める人物、ということはお分かりいただけたかと思います。

 とはいえプロデューサーにもキャスティングが得意だったり、資金確保が得意だったり、宣伝が得意だったり、とさまざまなタイプが存在します。でも基本的には、役者や監督、製作スタッフそれぞれがベストを尽くせる状況を生み出し、その“熱意”を引き出す手助けをすることで、最良の作品が出来上がると私は考えています。

 そんなプロデューサーからしてみれば、映画の中身を決定づける最大の要素は三つ。脚本と監督と出演者です。それぞれが影響し合いながら進んでいきますし、どんな化学反応を起こし、どんな結果を生み出すのか、実は完成するまで分かりません。だからこそ面白く、そこがプロデューサーにとっての醍醐味(だいごみ)ともいえます。

 6月1日から全国公開となる『はじまりのみち』では、進むべき方向性を決定づけたのは、原恵一監督の一言でした。最初にわれわれが企画していたのは『二十四の瞳』の名匠・木下惠介監督と母の山越えの実話を基に、映画化すること。そこで原恵一監督に、脚本を書いてほしいという依頼をしました。

 原監督は『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『河童(かっぱ)のクゥと夏休み』など、大人も子どもも楽しめるアニメ映画を作り続けている世界的なアニメ監督で、以前から木下作品の熱烈なファンと公言されていたからです。

 木下監督を敬愛されている原監督には「身に余るお話だが、こんな機会は二度とこないと思うので」と快諾していただき、映画の製作がスタート。そして数回の脚本打ち合わせを経たところで、原監督から「監督が決まっていないなら、自分が挑みたい」とうれしい“逆オファー”を受けました。

 原監督は俳優と撮影する実写の経験はまったくありませんでしたから、内なる熱意でご自身のフィールドを越えようとされたのでしょう。あとあと考えると、この時がこの映画プロジェクトが成功へ向けて大きく転換した瞬間でした。

 映画作りは、実はプロデューサーにとっても意外な展開だらけ。これはそんなことを象徴する出来事でした。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2014年2月7日 無断転載禁止