映画プロデューサーのささやかな日常(4)

映画「武士の献立」(12月公開)撮影現場より
 グルメな監督は実力もあり

     映画作りに通じるこだわり

 映画『わが母の記』にご出演いただいた樹木希林さんが、よくおっしゃっていたのが、「映画監督はグルメじゃないと(ダメ)」という言葉。グルメ、すなわち料理の味へのこだわりが大事ということは、一皿に込められた“繊細な表現”を感じとる力はもちろん、映画監督として「自分の好みへのこだわり」が必要ということなのでしょう。

 確かに映画の撮影現場では、毎日さまざまなお弁当や差し入れをいただきますが、監督の多くは、一家言あるように思えます。また、俳優と一緒に映画公開前に宣伝キャンペーンで全国各地を訪れる際には、おいしい地酒やご当地グルメが楽しみでしょうがない、とおっしゃいます。

 例えば『はじまりのみち』の原恵一監督は、その土地ならではの“ご当地もの”にこだわりがあり、撮影で訪れた浜松では生シラスやかき揚げに舌鼓。業界でも屈指と言われるほどお酒が強いので、ご当地ビールから始まり、日本酒もグイグイいかれます。

 『わが母の記』の原田眞人監督は、出身地の沼津でもひいきにされている名店のギョーザやスイーツがあって、沼津ロケでは自ら現場にしょっちゅう差し入れをされ、スタッフや俳優に大好評でした。中華にイタリアン、フレンチと、何でもお好きな健啖家(けんたんか)でもあります。

 『ひまわりと子犬の7日間』の平松恵美子監督は、焼き肉、焼き鳥など素材の良さをシンプルに生かした肉料理が大好き。小柄なのに、エネルギッシュな女性です。

 素材それぞれの持ち味を見極め、最大限に生かし、さらに組み合わせて調理することで生まれる一体感と深い味わい。映画を作ることもそれに似ているのではないでしょうか。

 俳優やスタッフから、ロケ地の天候やエキストラの体調…。監督はさまざまな要素を一つにまとめ上げる、さながら料理長です。確かに映画監督は「自分の味」追求への情熱とこだわりを貫く、バイタリティーあふれるグルメじゃないとダメなんだと思います。

 なお、樹木さんは「監督は~」とおっしゃいますが、ところがどっこい、今まで挙げてきた方々の中でも圧倒的な美食家です。

 ここだけの話、渋谷の屋台村のような庶民的な中華から、浅草老舗の天丼、表参道の隠れ家風フレンチまで、ぎっしりと書き込んだグルメ手帳を持っていらっしゃる。ホントに底知れない方です。とはいえ、樹木さんのお言葉、けだし名言なのではないかと思っております。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2014年2月10日 無断転載禁止