映画プロデューサーのささやかな日常(5)

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013」の授賞式=埼玉県川口市
 はじめての審査員

     「映画は国境超える」実感

 夏は、さまざまなお祭りの季節。先月、7月12~21日に埼玉県川口市で開催された「第10回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」で、長編部門の審査員という大役を拝命しました。

 この映画祭は、デジタル機材で撮影・制作された作品にフォーカスした国際コンペティション映画祭です。2004年から毎年開催されており、米映画雑誌『VARIETY』でも「世界の見逃せない50の映画祭」に日本で唯一選ばれるなど、国内でも重要な映画祭に成長しています。

 そんな素晴らしい映画祭に審査員としてご指名いただき、なんとも緊張の毎日でした。昨年、生まれてはじめて映画の賞というものをいただいた身にもかかわらず、今度は審査する立場になるとは、人生とは本当に不思議なものです。

 さて、実際に審査するのは、日本アカデミー賞の事務局長も務める富山省吾審査委員長と、全米アカデミー賞受賞経験のあるフランス人プロデューサー、ベルリン国際映画祭の審査員も経験されたインドネシア人のプロデューサー、僕を入れての4人。恐縮なことしきりです。

 通常の審査は奇数で行うのが普通だそうですが、なぜか偶数。同票で意見が割れた場合は話し合いで、ということになりました。国もテーマもさまざまな12本の映画に順位をつけるという作業は本当に難しく、まさに意見が真っ二つに分かれた作品もありましたが、なんとか4本の受賞作を決定することができました。

 グランプリ受賞の『チャイカ』(「かもめ」の意味)は、カザフスタンとシベリアを舞台に、主人公夫婦が過酷な自然環境に抗(あらが)い、壮絶に生き抜く姿を描いた作品。圧倒的な自然の映像に魅せられ、悲劇的な運命をたどるヒロインの姿に涙。

 その他に賞にはもれましたが、中国の『アメリカから来た孫』と台湾の『狼(おおかみ)が羊に恋をするとき』は、世代間で葛藤しながらも生きていく姿がチャーミングに描かれ、日本人でも置き換えられそうなシチュエーションも多く、同じアジア人として感覚は似ているんだな、とうれしく思いました。

 日本の『神奈川芸術大学映像学科研究室』は、審査員特別賞を受賞。27歳の若手監督による、学生と教授、助手の複雑な関係がコミカルに描かれた作品ですが、われわれ日本人審査員のみならず、フランス人の審査員が高く評価してくれたことが最大の受賞理由です。

 連日、1日何本も世界中の映画を観(み)ているうちに、まるで世界旅行している気分になりました。この広い地球上のさまざまな土地、国で、同じようで違う人々の営みがあるからこそ、葛藤や対立、愛が生まれます。そして、映画はそれを見つめ続け、すくいとることで生まれる。あらためて、映画は国境を超えて伝わっていく、そんな事実を再確認できたステキな夏となりました。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2014年2月10日 無断転載禁止