映画プロデューサーのささやかな日常(7)

『わが母の記』での役所広司さん(©2012「わが母の記」製作委員会)
 男が惚れる男―役者

     現場把握し迫真の演技

 幸運にも、今まで仕事をさせていただいた俳優の皆さんは魅力的な方ばかりでした。

 その筆頭は、『わが母の記』で井上靖さんをモデルにした小説家役を演じていただいた役所広司さん。男気(おとこぎ)、知性、色気…。男としての魅力をすべて持ち、作品ごとに役を変幻自在に演じる、まさに日本トップクラスの男優ではないでしょうか。

 イメージ通り、撮影現場でも常に寡黙。セリフが頭に入っているため、ほとんど台本に目を通されませんでした。時折スタジオを少し離れて(周囲への煙を気にされて)たばこを吸いに出かける姿も、昔気質(かたぎ)の昭和の男を見たようでした。

 最も驚いたのは、樹木希林さん演じる実母の死を電話で聞かされ、涙を流すシーン。カメラの動きに合わせてタイミングよく涙を流さなければならない難しいシーンで、5テイクは続きました。

 スタートと声がかかり、じわりと目に涙がたまっていく。そして?を伝う…。役所さんは集中力をキープし、泣いてはぬぐう演技を何度も、難なくこなしました。モニターの中の彼に共鳴し、泣くスタッフもいたほど、毎回“本物の涙”でした。

『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』での大泉洋さん(©2008「ゲゲゲの鬼太郎」フィルムパートナーズ)
 格別に印象深いのは大泉洋さん。『水曜どうでしょう』でブレーク中だったにもかかわらず、実写版『ゲゲゲの鬼太郎』で、ねずみ男という「汚れ役」をご快諾いただいた時は本当に感激しました。

 実際、ねずみ男を演じるために、出っ歯やはげメーク、薄汚れたフードスタイルの服…と、本来の大泉さんの姿からかけ離れていってしまいました。

 監督やスタッフに「これ俺じゃなくていいんじゃない?(笑)」と言いながら、やや顔が引きつっていらしたのにはこちらもヒヤヒヤ。ところが撮影が始まると、通常以上のテンションとギャグ。水木しげる先生の描いたねずみ男が、現実に存在していたのでした。

 雪山や地下洞窟などでの過酷なロケも多く大変でしたが、いつも大泉さんならではのハイテンションでスタッフを盛り上げてくださいました。今でもありがたく感じています。

 人を魅了する芝居はもちろん、画面に写っていない部分で、いかに撮影現場のテンションを把握し、コントロールするか-。俳優には、そうした力も必要だと教えてくれたのはこのお二人でした。優れた俳優は、プロデューサーの資質も持っているのだと思います。

 さて、お知らせです。よなご映像フェスティバルの一環で13日午後1時、米子市文化ホールにてトークショーを行います。地元でしか話せない「映画の裏話」を思う存分、語ります。ぜひ、ご来場ください。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2014年2月12日 無断転載禁止