映画プロデューサーのささやかな日常(9)

映画「武士の献立」の一場面(©2013「武士の献立」製作委員会)
 「武士の献立」あすから上映

     食愛する日本人の心込め

 いよいよ今週末14日から映画『武士の献立』の上映が始まります。企画を立ち上げて約2年、やっとお客さまに見ていただけることは本当に嬉(うれ)しいです。

 この作品は、2010年に公開され大ヒットした『武士の家計簿』に続き、江戸時代の加賀藩に仕えた包丁侍一家を描く時代劇です。

 企画のきっかけは、「料理無言抄」という当時のレシピ集。この書物を書き残した実在の包丁侍、舟木伝内と安信親子の詳細なレシピと、有名な三大お家騒動と言われる加賀騒動を盛り込み、ストーリーをダイナミックに構成しました。監督は山田洋次監督の愛(まな)弟子であり、「釣りバカ日誌」シリーズを手掛けた朝原雄三さんです。

 今回の主役はなんといっても「料理」。スタッフは「本物」にこだわり、天保元(1830)年創業の料亭「大友楼」や京都の料理学校の皆さんに協力していただきながら、舟木家のレシピを徹底的に調べ、再現することに粉骨砕身しました。

 治部煮(じぶに)、かぼちゃのいとこ煮など当時の武士が食していた料理をはじめ、藩の威信をかけて徳川家をもてなす饗応(きょうおう)料理のシーンでは、京都の松竹撮影所に石川から野菜や魚を運び、選(え)りすぐりの九谷焼や輪島塗を用意。料理人として生きた先人たちの矜持(きょうじ)に恥じることのないものができたと思っています。

 これもベースには、現代にも綿々と引き継がれる和食の伝統と長い歴史の積み重ねがあってのこと。これほどまでに「大切な誰かのためにする」料理にまつわる、さまざまな人の想(おも)いが詰め込まれた作品は、いまだかつてないと思っています。

 また、「和食」のユネスコの無形文化遺産への登録が今月4日に決定となり、世界的にも関心が高まる中という、グッドタイミングで公開を迎えます。

 主演の上戸彩さん演じるお春は、縁あって舟木家に嫁ぎ、料理が苦手な夫・安信へ料理指南を始めます。上戸さんは撮影を振り返り、「いわゆるチャンバラの時代劇ではなく、夫婦と家族の愛情に溢(あふ)れた現代にも通じる物語として楽しんでもらえると思う」とおっしゃっています。

 朝原監督は「結婚も仕事も自由に選ぶことができない江戸時代という設定を借りて、目の前のことに懸命に取り組む姿を描くことができた」と作品にメッセージを込めました。

 さまざまな人の想いを乗せて、完成した映画は海に漕(こ)ぎ出します。プロデューサーとしては、公開を迎え、ほぼすべて仕事が終わる訳ですが、まだまだ心配は尽きません。こと上映期間は映画館側が決めるもので、この航海、どこまで行けるか…。みなさま、どうぞこの作品をよろしくお願い致します!

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2014年2月12日 無断転載禁止