映画プロデューサーのささやかな日常(11)

トークイベントで坂下雄一郎監督(左)と対談。映画制作の新しい息吹を感じた=東京都内
 変わりゆく日本映画のカタチ

     若い世代の胎動を応援

 先日、『神奈川芸術大学映像学科研究室』という一風変わったタイトルの映画のトークイベントで、監督と対談しました。この作品は昨年、僕が審査員をやらせていただいたSKIPシティDシネマ映画祭長編部門の審査員特別賞受賞作です。

 とある芸大映像学科の助手・奥田は、事なかれ主義の教授陣と問題ばかり起こす学生との間で板ばさみの日々。ある日学生が起こした事件を目撃、報告した奥田は、表沙汰になることを恐れた教授陣に、ウソの報告書の作成を命じられる。その報告書をきっかけに、事態は思わぬ方向へと進み…。組織というものの理不尽さを架空の大学を舞台に描く、シニカルなブラックコメディーです。

 監督の坂下雄一郎さんは広島県出身の27歳。定時制高校に通いながらレンタルビデオで新旧の名作映画を片っ端から観(み)て、映画の面白さに目覚め、大阪芸術大学映像学科に入学。助手を務めた後、東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻に進み、黒沢清、大森一樹両監督に師事しました。

 この作品は大学院修了に合わせ、自身の助手としての経験を踏まえて制作。大学という閉じられた組織の内部告発ともいえる内容を、冷静な観察眼で軽やかに描いています。『スーパーの女』(伊丹十三監督)、『ハッピーフライト』(矢口史靖監督)にも通じる、ある業界の裏側を描く内幕モノの傑作です。

 対談はレイトショー上映後の22時すぎという遅い時間に始まりましたが、なんとほぼ満席。僕が坂下監督に制作手法を質問していく流れで進みました。

 驚きだったのは、最終的なカット画面の組み立てが頭の中に描かれていて、実際の撮影は1カットにつき1、2テイクしかないこと。通常、監督はスタッフや俳優と現場であれこれと演技やアングルをディスカッションしながら撮影を進めるため、いくつもテイクを重ねますが、非常に効率の良いエコスタイルだと感心しました。

 確かに20代から30代前半の監督はフィルムではなくデジタルで撮影し、パソコンで簡単に編集できるようになった世代。若い世代が旧来とは違うスタイルで制作を始めています。良くも悪くも、それが新しい時代を作っていくのでしょう。映画そのものも変わっていくはずです。その胎動が非常に頼もしく、彼らを応援していきたいと切に思いました。

 27歳の監督の実体験から生まれた、理不尽な社会にしばられ翻弄(ほんろう)される、ある意味こっけいな人間たちを描いたドラマ。全国で巡回上映されるそうなので、ぜひご覧ください。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

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 『神奈川芸術大学映像学科研究室』の公式サイトはhttp://kanagei.com

2014年2月14日 無断転載禁止