島根ふるさと遺産100選 (23)特産品

  味を通して、ふるさとの情景を思い起こさせる特産品が島根には数多くある。今回は十六島海苔(うっぷるいのり)と笹(ささ)巻き、出西しょうが、あご野焼を紹介する。

上品な香りと程よい辛味が人気の出西しょうが
出西しょうが(出雲市)

 出雲市斐川町の特産で、上品な香りと程よい辛味が人気の「出西しょうが」。400年以上の歴史を持つショウガは、斐伊川下流の同町出西でしか特有の味が生まれないとされる。

 斐伊川から流れた砂が堆積した土壌で育てられる「出西しょうが」は、ショウガ特有の繊維質が少なく、みずみずしくて、シャキシャキとした食感の良さが特徴。他地域で同じ種ショウガを植え付けても、同じ味にはならないという。

 昭和30年代までは盛んに生産されたが、安価な他産地品に押されて激減。現在は特産化を目指して1998年に地元農家で立ち上げた生産組合(2戸)が栽培し、その歴史をつないでいる。

 作業は5月の植え付けから始まり、8月から11月にかけて収穫、出荷する。近年は生食に加えて、アイスやしょうが糖、ワイン、カレーといった加工品の原料としても重宝されるなど、全国で需要が高まっている。

トビウオのすり身を材料に焼き上げる「あご野焼」
あご野焼(出雲地域)

 島根県の「あご野焼」。地元でアゴと呼ばれるトビウオのすり身に、地伝酒などを加えて練り、串に筒状になるように巻き付け、回しながら焼き上げる特産品だ。

 トビウオは、春から夏にかけて日本海で産卵するため北上し、群れで海面を飛ぶ姿がしばしば見られる。1989年に「島根県の魚」に選定された。独特の伝統漁法は、船から集魚灯を照らし寄ってきたアゴを、長い柄の網ですくう「アゴすくい」があり、夏の夜の風物詩となっている。

 トビウオは脂肪が少なく粘り気があることから、かまぼこの素材に適している。表面の香ばしさに、あっさりとした食感が相まって、「あご野焼」はお茶請けや日本酒のつまみなど、地元の食卓を彩る。

 松江市浜乃木2丁目の老舗かまぼこ店「長岡屋茂助」では、へらを素早く動かし形を整え、表面が膨れないよう針の付いた棒で小刻みにたたきながら、一本一本丁寧に焼き上げる。工場内には職人技の独特なリズムが響き、香ばしさが漂う。

厳しい寒さに耐え、十六島海苔を摘み取る島子
十六島海苔(出雲市)

 日本海の冬の味覚として知られる高級食材の出雲市十六島町特産「十六島海苔」。冬になると、荒波が洗う岩場で「島子(しまご)」と呼ばれる女性らが、厳しい寒さに耐えながら黙々と手で摘み取っている。

 十六島海苔は出雲国風土記に記載され、香り豊かできめが細かく、黒紫色をしているのが特徴。出雲地方の正月の雑煮には欠かせない存在だ。

 毎年冬には、長年受け継がれてきた特定の島にノリが繁茂し、十六島海苔生産組合(16軒)の組合員が極寒の海へ繰り出す。

 スパイク付きの長靴を履いた島子たちは時折襲いかかる高波に注意しながら、指先に絡めたり、乾いて岩場に張り付いたノリを?ぎ取ったりして収穫。命がけの作業で摘み取られたノリが、各地のファンの舌をうならす。

 組合員の高齢化や後継者不足の問題が横たわるが、この地でしか採れない貴重な海の幸を次世代に伝えていくため、生産者の奮闘は続く。

笹巻き(ちまき)を作る安来市広瀬町比田地区の住民(資料)
笹巻き(出雲地域)

 出雲地方では、月遅れの端午の節句(6月5日)に、子どもたちの元気な成長を願って「笹巻き(ちまき)」を作る風習がある。地区や家によって巻き方や縛り方は異なるが、素朴な味わいが特徴で、季節になると全国から引き合いもある。

 安来市広瀬町比田地区では5月下旬になると、地元住民30~40人が集まり、恒例の笹巻き作りが始まる。冷涼で昼夜の寒暖差が大きい比田のもち米、うるち米を使い、ササの葉は地元で刈り取る。

 メンバーの中心は地域おこしグループ「いきいき比田の里加工部会」(田辺チカ子部会長)。もち米を石臼でひき、手ごねの団子を7枚程度の葉で丁寧に包む。毎年、約5万本を作り、北は北海道から南は九州まで各地に発送。地域の伝統文化を全国に届けている。

 田辺部会長(66)は笹の葉の殺菌力に着目した地域伝統食だとし「保存が利き、丈夫に過ごしてほしい願いも込めてある。先人のありがたい知恵で、しっかり引き継いでいきたい」と話した。

2014年2月18日 無断転載禁止