島根ふるさと遺産100選 (24)食文化

 出雲と石見、隠岐からなる島根の食文化は多彩だ。出雲そばと「どんちっち三魚」、箱寿司(ずし)、伝説に包まれた隠岐のイカを紹介する。

イカ寄せの伝説が伝わる由良比女神社
隠岐のイカ(隠岐郡)

 四方を海に囲まれた隠岐地方はヒラメやマダイなど魚介類が豊富で、釣り人にとって関心が高い。このうち、西ノ島町では、同町浦郷にある由良比女神社のイカ寄せ伝説を基にイカを町のイメージキャラクターとして活用している。

 同神社は842(承和9)年にはあったとされ海上守護の神として信仰を集める。伝説では主祭神のユラヒメノミコトが出雲大社から芋桶(いもおけ)に乗り、帰る途中の海でイカに手をかまれ、おわびとしてイカが浜に寄ってくることになったという。

 由良比女神社の真下にイカ寄せの浜がある。現在は少なくなったが多い時には、毎年10月から2月にかけ一夜に数千連(1連は20匹)のイカが押し寄せ、番小屋で待ち構えていた島民らが船や岸辺で、捕り合った。神社の灯籠や拝殿のかもいにはイカの彫刻がある。

 イカはフェリーターミナルの壁面などにも登場。ゆるキャラ「活イカ活っちゃん」の着ぐるみも2年前にお目見えし町をPRしている。

浜田漁港に水揚げされる「どんちっち三魚」のアジ、ノドグロ、カレイ
どんちっち三魚(浜田市)

 浜田の水産ブランド「どんちっち三魚」は、浜田漁港に水揚げされる代表的なアジ、ノドグロ、カレイ類の3魚種を指す。鮮魚や干物加工品として県内外に出荷され、抜群の脂の乗りや味わいで食通をうならせている。

 旬のマアジは、刺し身しょうゆにじわりとしみ出るほどの脂の乗りが最大の特徴だ。ブランド基準で定める10%以上の脂質含有量は全国トップクラスで、東京の飲食店などから引き合いは強い。

 「白身のトロ」と呼ばれ、高級魚として定着したノドグロ(アカムツ)も、他産地と比べ、脂の乗りやうま味に定評がある。

 カレイは、干物の生産量で浜田市が日本一を誇る古くからの特産。子持ちササカレイの一夜干しは上品で、とりわけ美味とされる。

 三魚ともに、旬の水揚げ時期や魚体サイズなどのブランド規格に基づき認定される。アジであれば脂質検体機器の活用や出荷情報の公開など、厳格な管理がブランド評価を支えている。

多くの人々に親しまれる大田市の伝統料理・箱寿司
箱寿司(大田市)

 多くの地域住民に親しまれる大田市の伝統料理・箱寿司。木の枠の中に酢飯やシイタケ、ニンジン、油揚げなどの具材を重ねて作る。

 箱寿司の由来は、天領の石見銀山(大田市大森町)に派遣された代官やその奥方が、江戸を懐かしんで伝えた、とされる。箱寿司は時代を超え、今なお人々に愛され続けている。

 箱寿司は、簡単かつ大量に作ることができる。固く押してあるため、持ち運びにも便利で保存も利くという。彩りも美しく、祭りや祝い事など大勢が集う席に欠かせない郷土料理として伝えられている。

 近年、箱寿司をPRする活動が大田市内などで行われており、大田商工会議所青年部のメンバーはローカルヒーロー戦隊「ハコレンジャー」を考案した。

 昨年12月にはハコレンジャーのテーマソングに合わせたダンスの振り付けが完成し、同市大田町の市民会館で開かれたコンサートで披露された。

出雲地方の食文化を代表する出雲そばの割子
出雲そば(出雲地域)

 出雲そばは、島根県東部の出雲地方に伝わり、食されてきた。色が黒く、白っぽい信州そばとは対照的だ。そば粉をひく時、ソバの実を皮ごと石臼でひくためで、皮と実の間に含まれる甘味や香りの成分が野趣豊かな独特の味を生む。

 食べ方は、3段の丸い漆器にそばを盛り、少量のだし汁をかけて食べる「割子(わりご)」が代表的。薬味はかつおぶしと刻みネギ、のり、おろし大根が定番。湯がいた釜揚げもおいしい。

 たたら製鉄で栄えた奥出雲町では古くからソバが栽培され、江戸時代には同町八川産のソバが幕府に献上されたとされる。

 同町のソバには、甘味と香り、粘りが強く、信州産などより実が小粒の在来種があった。収量が少なく、他品種との交雑で種の存続が危惧されたが、近年この在来種を「横田小そば」として復活させ、普及する取り組みが進められている。同町は地元のそばを「奥出雲小そば」として独自に売り込もうとしている。

2014年3月4日 無断転載禁止