(55)旧道面家住宅(吉賀)

石見地方の農家の特徴を残し、国の重要文化財に指定されている旧道面家住宅
江戸後期の農家伝える

 中国山地の山あいにある吉賀町注連川(しめがわ)集落で、小さいながらも堂々とした入り母屋造りのかやぶき農家の建物が目を引く。町内では唯一、国の重要文化財に指定されている「旧道面家(きゅうどうめんけ)住宅」。建築年代は18世紀後半以前と推定され、土間が狭く、土間内に牛馬の飼育小屋や風呂場を造らないなど、石見地方の農家の特徴を残している。

 桁行(けたゆき)7・88メートル、梁間(はりま)6メートルで、棟と平行な面に出入り口がある「平入り」の様式。19世紀初頭に現地に移築された。県内の古民家の中では石見地方の典型的な農家建築といい、1969年に国の重要文化財に指定された。75、76年の2カ年で解体修理後、家屋の傷みを受け、90年、2008~09年の2回、屋根のふきかえ修理も行った。

 重要文化財指定時は、それまでの増改築を経て、床上部は、正面に「おもて」「おくのま」、背面に「なかえ」「なんど」の四間取りだったが、解体修理の際に増築部分を撤去し、建築当初の「おもて」と「なんど」の二間取り構成に復元した。

 屋根は軒下を低くし、冬の寒さを防ぐよう工夫されているほか、かまどは土間の隅に土と石で作られているのが特徴。小規模な居住空間と合わせ、江戸時代後期の農民の生活環境を今に伝えている。

 赤土とわらを混ぜた団子を練り込んだ壁は、約40年の風雪に耐えている。夫の守さん(故人)が左官として解体修理に携わった、近くに住む主婦坂田愛子さん(70)は「主人が苦労して修繕した貴重な建物が、後世にいつまでも残ってほしい」と願っている。

2014年5月1日 無断転載禁止