こどもトピック 絵本“様変わり”

昔話絵本の変化について話す岩田英作教授=松江市浜乃木7丁目、島根県立大短期大学部松江キャンパス
 昔話の一部で悪者退治なかったり…
           ストーリーちょっと違うよ


 昔話(むかしばなし)の絵本の一部で、以前とは少し違(ちが)うストーリーのものが出てきています。悪者が退治(たいじ)されなかったり、人が食べられる場面(ばめん)が削(けず)られたりしています。子どもに残酷(ざんこく)な場面を読ませたくない、という20~30代の保護者(ほごしゃ)の思いが背景(はいけい)にあるようです。半面、原作に忠実(ちゅうじつ)な絵本がいいという保護者もおり、教育観(きょういくかん)が多様化しているようです。

 ▽教育観の多様化背景に

 昔話の役割の一つに、悪いことをしたら罰(ばつ)を受けると教えることがありますが、一様(いちよう)ではなくなりました。例えば、カニに悪さをしたサルが、臼(うす)にぺちゃんこに押しつぶされる「さるかに合戦」の結末は、サルが謝(あやま)り、仲直りする絵本があります。「かちかち山」は、おばあさんを殺したタヌキが、ウサギのつくった泥(どろ)の船で海に沈められていましたが、タヌキが謝って終わる本もあります。

 海外の昔話も同じ。「赤ずきん」は、オオカミがおばあさんを食べる絵が省略(しょうりゃく)され、「三匹のこぶた」はオオカミが鍋(なべ)で煮(に)られることなく、逃げていく結末もあります。

 島根県立図書館(松江市)読書普及指導員(ふきゅうしどういん)の江角宏子さんによると、このような絵本は10年以上前からあり、複数(ふくすう)の出版社(しゅっぱんしゃ)が発行。江角さんは「ハッピーエンドや明るい話を求める若い保護者が増え、注目されているようだ」とみています。

 実際に長年、内容を変えた絵本を出版しているブティック社(東京都)の編集担当者は「何年も一定の売り上げがある。それは保護者に求められているから」と説明。昔話などを研究する同県立大学短期大学部松江キャンパス(松江市)の岩田英作教授(きょうじゅ)(51)は「今は原作に忠実な絵本が多いが、読者のニーズによっては今後、原作と違うものが増えるかも」と推測(すいそく)します。

 保護者の思いはさまざま。同図書館で絵本を探(さが)していた松江市内の30代女性は「残酷な場面を子どもにどう伝えればいいのか、分からない。楽しい話を聞き、明るい子どもに育ってほしい」と打ち明けました。

 一方で、同大学松江キャンパスの図書館を訪(おとず)れた飯塚寿江さん(33)=松江市上乃木9丁目=は「子どもが知らない教訓(きょうくん)を得られるのは昔話だからこそ」と考え、原作に忠実な絵本を読むようにしているそうです。

 岩田教授は「絵本の読み聞かせは子どもの成長に深く関係する」と強調し、「明るい内容の絵本を読むだけでは、悲しみや怒(いか)りといった感情を知る機会が少なくなる」と指摘。昨年8月に発覚(はっかく)した、松江市教育委員会による漫画(まんが)「はだしのゲン」閲覧(えつらん)制限を疑問視(ぎもんし)し「大人は、子どもが読みたがる本を読んであげることが大切だ」と説きました。

2014年5月12日 無断転載禁止

こども新聞