(56)龍雲寺の八方眈の一疋大竜(浜田)

龍雲寺の八方眈の一疋大竜
錯覚利用必ず目が合う

 約130畳の本堂に足を踏み入れると、頭上に鎮座する巨大な竜がにらみを利かせる。浜田市三隅町芦谷、標高362メートルの高城山にある龍雲寺の墨絵「八方眈(にらみ)の一疋(ぴき)大竜」は、600年以上の歴史を持つ同寺の境内の中でも特別な存在感を放つ。

 竜を描いたのは、幕府の絵師で木挽町狩野派7代目の狩野法眼惟信。禅門の寺は竜を守護神としており、全国的に竜にまつわる絵や置物などを保有しているところが多い。

 狩野氏の描いた同寺の竜については、描かれた年数や作品の大きさなど正確な記録は残っていないが、本堂の天井は絵をはめ込むことを前提に設計されていることから、特別な目的で描かれたことが推察できる。八方眈の名の通り、本堂内のどの位置から眺めても天井の竜と目が合うよう、人間の目の錯覚を利用した画法が用いられた。

 同寺は1382年に当時の三隅城の城主、三隅信兼が、三隅家の菩提(ぼだい)寺として益田市内に創建したことが始まりで、1441年に現在の場所に移った。現在の本堂は浜田市蛭子町にあった浜田藩主松平家の菩提寺の長安院の本堂を解体し、1837年に移築したものとされる。

 竜を見るために寺を訪れる観光客も多いといい、同寺の44代目住職、野原眞承さん(44)は「誰もが安心できる安らぎの場所として訪れてほしい」と話す。

2014年6月5日 無断転載禁止