紙上講演 元外務省国際情報局長 孫崎 享氏

元外務省国際情報局長 孫崎 享氏
日本外交の今後の課題

犠牲への覚悟 議論を

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が6月30日と1日、浜田市と益田市であった。元外務省国際情報局長の孫崎享(うける)氏(70)が「日本外交の今後の課題」と題して講演し、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認を強く批判した。要旨は次の通り。

 憲法学者を中心に12人で立ち上げた「国民安保法制懇」のメンバーとして、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認に反対している。メンバーには元内閣法制局長官2人も入っており、それほど政府の論理はいいかげんだ。

 安倍晋三首相は5月の記者会見で、邦人を輸送する米艦船の防護を例示し、行使の必要性を訴えたが、そんな例はまず起こらない。米国務省は「米国民の救助優先」を公表しており、これまでも米軍の輸送手段で紛争国から逃れた外国人など1人もいない。

 沖縄県の尖閣諸島をめぐる中国との対立からも、ニュアンス的に必要性を伝えているが、尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲に含まれており、集団的自衛権とは無関係だ。

 根幹は、邦人を救うためでも、国土を守るためでもなく、国土の外で米国とともに戦えるシステムを作ること。国民をかえって不安定な状況に置くものだ。「戦争に行くのではなく、後方支援だ」と言っても、武器弾薬や食料を他国部隊に提供する後方支援は戦闘の一環。当然、攻撃対象になる。

 イラク戦争に軍が参加した英国やスペインは、戦闘や国内でのテロ事件で多数の死者を出した。そんな犠牲への覚悟があるのか、徹底的に議論すべきだ。

2014年7月2日 無断転載禁止