仕事みてある記 ヒッグス粒子研究に情熱

パソコンで理論を確認しながら、論文をチェックする波場直之教授=松江市西川津町、島根大
 島根大学総合理工学部
       波場直之教授(松江市西川津町)


 「目標はノーベル物理学賞」。物質(ぶっしつ)に重さを与え、神の粒子(りゅうし)と呼ばれる「ヒッグス粒子」の研究に取り組む島根大学(松江市西川津町)総合(そうごう)理工学部の波場直之(はばなおゆき)教授は、力強く言葉を放った。物理学の研究者として世界でも最高の栄誉(えいよ)を目指す。

 波場さんは長野県出身。大阪大学入学後に宇宙(うちゅう)の謎(なぞ)を解き明かす素粒子(そりゅうし)物理学に魅力(みりょく)を感じ、研究者への道を歩もうとしたが、教官から「この道は絶対に就職(しゅうしょく)はできない」と言われ、別の分野で研究していた。しかし、夢を諦(あきら)め切れず、大阪大学大学院修士1年の時に名古屋大大学院に移り、素粒子物理の世界に飛び込んだ。

 院生時代の論文3本は、ドイツなど海外の学術雑誌(ざっし)で高く評価され、本格的に研究者としての道を歩み始めた。その後は徳島大や北海道大などに勤務(きんむ)。昨年6月に松江市出身の妻の要望を受け、島根大に赴任(ふにん)した。「何で島根に、と研究仲間からよく質問される。でも素粒子物理学は鉛筆(えんぴつ)と紙があれば研究できる」。研究場所にはこだわらない。

 ヒッグス粒子は、なぜ物質に重さが生じたのか、という物理学の根源的(こんげんてき)な問(と)いを解決(かいけつ)する素粒子として、近年、世界中の優(すぐ)れた研究者たちが注目している。宇宙の始まりや仕組(しく)み、構造(こうぞう)などの解明(かいめい)にもつながるとされ、研究者たちが次々と新しい理論や実験結果を発表しており、1分1秒を競い合う状態となっている。

 多忙(たぼう)な中で研究ができるのは、仮眠(かみん)を取った後の深夜(しんや)2時から朝5時までの3時間ほど。難解(なんかい)な数式(すうしき)や理論(りろん)を駆使(くし)し、壮大(そうだい)な宇宙に思いを巡らせる日々。新しい発見があると「世界の真理(しんり)をのぞき見たような感覚」になり、興奮(こうふん)して数日寝食(しんしょく)を忘れることもあるという。「どんなに忙しくても研究している時が一番楽しい。自分にはこれしかない」と笑みがこぼれる。

2014年5月18日 無断転載禁止

こども新聞