仕事みてある記 がん細胞をいち早く発見

顕微鏡で見える細胞をモニターで確認する松浦幸浩さん=松江市母衣町、松江赤十字病院
 松江赤十字病院の細胞検査士
       松浦幸浩さん(松江市母衣町)


 「決(けっ)して見落としがあってはならない仕事。高い集中力は欠(か)かせません」。松江赤十字病院病理部(びょうりぶ)(松江市母衣(ほろ)町)の一角で、松浦幸浩(ゆきひろ)さん(55)が、真剣(しんけん)な表情で顕微鏡(けんびきょう)をのぞく。わたしたちの体の細胞(さいぼう)の中に潜(ひそ)むがん細胞をいち早く見つけだし、人々の命(いのち)と健康(けんこう)を守る細胞検査士(けんさし)だ。

 細胞検査士は、がん細胞を見つける「細胞診(しん)」を行う専門資格を持った臨床(りんしょう)検査技師(ぎし)。島根県内に39人、同病院には3人が勤務する。患者(かんじゃ)から採取した細胞に観察(かんさつ)しやすいよう色を付け異常(いじょう)がないか、がんなどの悪性(あくせい)細胞がないかを顕微鏡で調べる。わずかな変化を見逃(みのが)さないことが病気の発見と早期治療(ちりょう)につながる。

 松浦さんは熊本県出身。親類に臨床検査技師がいたことから医療(いりょう)に興味を持ち高校卒業後、臨床検査科のある短期大学に進んだ。実習中(じっしゅうちゅう)に出会った細胞検査士の姿を通じて「細胞を自分の目で見て判断するという仕事に魅力(みりょく)を感じた」。

正常な細胞(左)と、変異した細胞=松江赤十字病院病理部提供
 卒業後1年間、熊本市の研究所勤務を経て、細胞検査士の資格取得のため夜間にバイトをしながら勉強し、23歳で合格率25%の難関(なんかん)を一発で突(とっ)破(ぱ)。学生時代に出会った妻、佐知子さん(54)の出身地である島根に来ることを決め、松江赤十字病院に就職(しゅうしょく)した。

 細胞検査士としての経験は長いが、資格は4年ごとの更新(こうしん)制のため、常に技術の維持(いじ)と向上に向けた心掛けが必要だ。日々の業務(ぎょうむ)や勉強はもちろん、医師や看護師(かんごし)、ほかの細胞検査士など多くの人との情報交換(じょうほうこうかん)も積極的(せっきょくてき)に行う。

 いつも胸にあるのは、「人の命を守る」という思いだ。2009年から、子宮(しきゅう)の入り口にできる「子宮頸(けい)がん」予防の啓発(けいはつ)のため全国の細胞検査士の活動に加わる。今年4月、松江市内の大型店であったイベントでは、細胞診による早期発見で子宮を温存(おんぞん)した治療ができるとPR。買い物客らに「検診を受けて」と呼び掛けた。

 「人生は山登りと一緒(いっしょ)。前に前に、と夢中(むちゅう)で突(つ)き進(すす)んで今がある」。10年前に友人に誘われてたちまち虜(とりこ)になった趣味(しゅみ)の山登りに、歩んできた道を重ねる。顕微鏡をのぞく時とは一変、山の話題になると笑顔で話が尽きない。

2014年6月1日 無断転載禁止

こども新聞