映画プロデューサーのささやかな日常(12)

「ひまわりと子犬の7日間」の若林正恭さん(左)と堺雅人さん((C)2013「ひまわりと子犬の7日間」製作委員会)
 日本アカデミー賞の待機フロアにて

     高揚感と興奮印象的

 日本の映画祭は数あれど、「日本アカデミー賞」は唯一、テレビ放送されるということもあり、普段見られない役者さんの“演出されない姿”を見ることのできる式典としても世間の注目を浴びるのではないでしょうか。

 昨年は僕の携わった『わが母の記』が、役所広司さん、樹木希林さん、宮崎あおいさんやスタッフなど数々の優秀賞を受賞し、初めて受賞者として出席させていただきました。日本アカデミー賞は映画業界関係者と映画ファンの会員による直接投票で選ぶ賞ですから、受賞は最大級の喜び。最優秀主演女優賞を受賞した樹木さんが壇上で喜びを語る姿を見て、体験したことのない感動がこみ上げたことを覚えています。

 今年は今月7日に開催され、僕の作品では『ひまわりと子犬の7日間』でオードリー若林正恭さんが話題賞を、『武士の献立』で上戸彩さんが優秀主演女優賞を、余貴美子さんが優秀助演女優賞を受賞しました。このお三方は映画の企画当初から僕らプロデューサー陣が熱意を持ってオファーした方々だったので、格別にうれしいものになりました。

 特に若林さんは映画初出演ですが、非常に重要なキャラクターを演じていただきました。膨大な数のテレビやラジオ、雑誌連載の仕事の合間を縫って宮崎県の山奥での撮影に参加され、終了後はギリギリ最終便の飛行機で帰京するという過酷なスケジュールで参加していただきました。

 高輪のホテルの巨大なホールで3時間半にわたって行われた授賞式もさることながら、最も印象的なのは全員の高揚感と興奮に満ちた待機フロア。受賞者だけでなく、俳優事務所の社長や役員、担当マネジャー、ヘアメーク、衣装担当や映画会社のお偉方、インカムをつけて誰かと話し続ける運営スタッフなどが入り交じり、相当なにぎやかさです。

 他の受賞作品の脚本家や監督にも再会し、「お元気でした?」などとご挨拶(あいさつ)させていただけるのも、この会場ならではの楽しみ。宮崎あおいさんとは昨年の授賞式以来の再会となりましたが、相変わらずの素敵(すてき)なたたずまいで、またいつかお仕事をさせていただきたいと思いました。

 入場の華やかなレッドカーペットを歩く直前、会場裏の狭いスペースでスタンバイしながら出番を待つという行為は、おそらく人生でもめったにない時間です。ドキドキする心臓をおさえるため、僕は何度も深呼吸をしていました。また来年、それが無理でもまたいつか絶対来たい。そんな雰囲気を持った日本アカデミー賞は、映画人憧れの場であり続けることでしょう。(松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2014年3月14日 無断転載禁止