映画プロデューサーのささやかな日常(15)

映画「アナと雪の女王」の一場面((c)2014 Disney. All Rights Reserved.)
 ディズニー映画に見る“女性の生き方”考

     能力のコントロール必要

 『アナと雪の女王』が日本歴代興行収入3位という記録を達成し、公開から3か月以上たっても大ヒットし続けています。先日、僕も遅ればせながら見ることができました。映画館には家族連れやカップルなど、男女を問わずあらゆる年齢層の人が集まっていました。よそさまの作った映画ではあれど、お客さまでいっぱいになった劇場を見るのは本当にうれしいものです。

 先月の連載の内容とシンクロしますが、実はこの映画のヒットには、今までのディズニー映画とは異なる“現代の女性の生き方”がテーマとして丁寧に描かれている点が大きかったように思います。

 雪の女王ことエルサは幼いころ、触れるものをみな雪に変えることができる能力に気づいたものの、両親にその力を抑えるよう育てられました。この彼女の設定こそが、この作品の斬新さなのです。

 働く女性が厳しい社会で生きていくためには、自分の能力をコントロールすることが必要です。会社組織の中で自分のやりたい仕事をするためには、男よりも目立たず、上司を立てつつ、周囲の目を気にしながら行動することが、男女平等といわれて久しい今でも求められることが少なくありません。

 単純に事務処理能力やクリエイティビティなどの実力のみでは会社で出世できないということは、男性サラリーマンの皆さんもよくご存じかと思います。

 映画の中でエルサは悩んだ揚げ句、特殊能力をコントロールせず、一人で生きることを選びます。この決意が「Let It Go(ありのままに)」という言葉で歌い上げられます。

 自分の能力を信じ、それだけで闘って生きていきたい、というのは働く女性のみならず、誰しも理解できる考え方です。ところが、それを解放しすぎてしまうと悲劇が待っている。自分のやりたい放題に生きることは自らが存在している社会からの逸脱となり、「孤独」という悲しみが待っているのです。

 しかも、それを肯定してくれる“白馬の王子様”はやってくるとは限らない。一見夢のようなファンタジーワールドを舞台にしながら、このエルサの行動そのものを通して、含蓄のある教訓が語られているからこそ、この映画はあらゆる世代にちょっとした切なさと共感と感動を与えたのだと思います。

 とはいえ、そんな偏屈な分析をしながら映画を見るのはあまりお勧めしません。観客の皆さんには、純粋にワクワクドキドキして、涙する、そんな映画体験をたくさんしていただきたい。話題の『アナと雪の女王』はもちろん、ぜひ、この機会にそれ以外の映画も映画館で見ていただくことをお勧めします!

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2014年6月13日 無断転載禁止