紙上講演 日銀松江支店長 木村武氏

日銀松江支店長 木村武氏
日本と山陰の、これから

地域での技術進歩必要

 山陰中央新報社の米子境港政経クラブの定例会が19日、米子市内であり、日本銀行松江支店長の木村武氏(49)が「日本と山陰の、これから」と題して講演した。地域経済の活性化に向け、技術を進歩させる必要性などを説いた。要旨を紹介する。

 設備投資で生産効率が高まり、少ない労働力で収益を生み出せる製造業に比べ、従業員の技術や能力が影響する小売業やサービス業は、生産性が高いとは言えない。国内で開業した企業を産業別にみると、生産性の低い業種の割合が高い。既存企業と、生産性の水準がさほど変わらない企業が入れ替わっても、生産性向上や雇用創出にはつながらない。

 こうした状況からの脱却へ、昨今の人手不足がきっかけとなる可能性がある。人材確保のために賃金の上昇傾向が強まる中、新規参入企業には高い生産性が必要となり、低い開業は減少するだろう。低賃金、低生産性の企業は、廃業が進むとみられる。

 新規参入企業と既存企業が切磋琢磨(せっさたくま)し、新しい事業を掘り起こすような展開になれば、マーケットの新陳代謝が高まる。その結果、経済全体の生産性が高まるとともに、新たな需要が生まれ、雇用につながるはずだ。

 さらに、山陰両県では人口減少に注目が集まっているが、「技術進歩率」の低さの方が大きな問題だ。技術進歩率とは、環境の変化に企業が柔軟に応じ、新しい製品を供給し続ける能力があるかを指す。

 2000~08年の産業別の技術進歩率は、両県とも23業種の大半で、全国平均を下回った。ネットワークが一つの地域にとどまっていると、新しい事業を生み出す力が弱く、技術は進歩しない。ネットワークを他地域に広げ、新規参入を増やしていくことが必要だ。

2014年9月20日 無断転載禁止