レッツ連歌スペシャル(要木 木純)・10月30付

(挿絵・麦倉うさぎ)
 今年八月三十日の夜でした。外で人がざわざわ騒ぐ声がしました。何だろう。やがてどーん、どーんという音が遠くから響いて来ました。ああそうだった。松江の水郷祭(八月九日、十日)の花火大会が、台風接近で中止され、この日に延期になっていたのでした。先ほどの声は、花火見物に向かっていた人たちのものでした。


 何事ぞこんな夜更けに人の声

のお題はこういうわけで思いついた次第。

 一月遅れの花火大会

とでも付けましょうか。ただ、これでは、状況が特殊すぎるので、何のことかわかりませんね。意表を突くけれども、「ある、ある」、「ありそうだ」と思えるような事件を付けて下さい。

寝ぼけまなこで探すリモコン    (浜田)勝田艶

酔って隣の家へただいま (熊本・天草)龍石美和子

にぎわい始めた村のコンビニ  (松江)放ヒサユキ

イヤホン外れたまま眠りこけ   (益田)石田三章

わざとじゃないよカギをかけたの(出雲)野村たまえ

飯はまだかとたたき起こされ  (益田)石川アキオ

テレビの前で日の丸を振り   (江津)佐々木初美

制服のまままだ遊んでる     (益田)竹内良子


 謎の声に対して、なーんだ、そうだったのかという種明かしをするパターンですが、表現の仕方が大事ですね。直接にすべてを説明するのではなく、ワンクッション置いて、詠まない部分を残すと味わいが出る。竹内さんの作、「子ども」と明言しないで、「制服のまま」と表現することで面白くなりました。「あきれた」という親の思いが伝わってきます。


 日常から離れて、歴史や架空の物語を使った、時空を越えた付け方もあります。一種の違和感が楽しい。

早馬来(きた)る殿ご切腹    (松江)森広典子

慌てふためく本所吉良邸    (松江)松田とらを

路地から路地へ勤王の志士   (雲南)難波紀久子

逃げろルパンよ銭形が来た    (益田)可部章二

付け馬連れて主のご帰還     (松江)三島啓克


 忠臣蔵、幕末物、それからルパン三世。三島さんの「付け馬」は、落語ネタですね。


 夜と言えば、ひそかな恋の時間。

月がとっても青いんだもの    (雲南)渡部静子

今朝はパパママ機嫌いいよね  (出雲)矢田カズエ

恋の病だほっといてくれ      (松江)本田章

隣の部屋はアツくなってる    (雲南)安部小春

隣の新婚仲の良いこと      (松江)持田高行


 渡部さんの、「月がとってもあおいから」を持って来た発想はすばらしい。あれは恋の歌ですね。


 夜と言えば、神や妖怪や幽霊が活躍する怖い時間。その声の正体は・・・。

お狐さんの祭りじゃろうて    (美郷)芦矢敦子

鬼太郎一行道に迷って       (浜田)三隅彰

のそりのそりと月照寺の亀     (松江)金津功

一まーい二まーい三まーい四まーい(松江)中西隆三

貧乏神が出て行く相談    (浜田)佐々木勇之祐

出雲に集う神お迎えし       (江津)江藤清

月に誘われ唄う子狸      (津和野)岡田忠良



 夜は不思議な時間。以下の句は付け方の理屈がよくわかりません。でも、それがむしろ夜という場に漂う不条理感に合っているのです。

花札ばくち負けたくやしさ     (益田)小倉豊

そして隣はもぬけの殻に     (出雲)吾郷寿海

寝てはならない満月の夜    (松江)佐々木滋子

隣はたしか街に出たはず     (大田)丸山葛童

話は付いた筈じゃないのか    (江津)花田美昭


 読者は、なんなんだ一体これは、とくびをひねる。謎が解決しない不満と不安の中にとり残されてしまいます。こんな風な付け方も一興だと思います。

 と、原稿をここまで書いた時、玄関のドアをノックする音。おや、こんな時間に誰だろう・・・。

          (島根大学法文学部教授)

2014年10月30日 無断転載禁止

こども新聞