出雲商業高校 注目集める出商デパート

 島根県立出雲商業高校(出雲市大津町)は、本来の商業科教育はもとより、各種の事業、課題研究にも精力的に取り組んでいる。中でも今年で9回目を迎えた「出商デパート」は市民の注目を集め、本校の目玉事業に成長。今年も29、30日の2日間、盛大に開催する。その他、校外に飛び出しての「出商カフェ」の催しや「木育の森」事業、経済調査部では出雲大社から出雲の街を知ろうと、お菓子のオリジナル商品化にも取り組んでいる。また、今年で6年目を迎えたNIE実践校としての活動は全校挙げての取り組みで、全教科全教員参加を目指している。「出商デパート」を中心に、出雲商業高校が取り組む各種事業、研究を紹介する。


仕入れ数量を考えている担当教員とマネジャー
商業高校にしかできない販売実習とは? 専門知識生かし販売促進

 本年度の3年生課題研究「デパート経営グループ」では、マーケティング知識を活用した販売促進を考えてきました。「なぜお客さまはお金を払って物を購入するのか」。「出商デパート」を開催するうえで、商売の基本となる販売について考えました。

 それはその物自体が欲しいのではなく、物を購入し、使ったり食べたりすることで“満足感を味わいたい”、すなわち物ではなく“体験”を購入しているという結論に至りました。まさにこの欲求を満たそうとする販売活動こそがマーケティングの基本であると思います。

 買う側である時は当たり前のことですが、売る側になるととかく物自体を売ろうと必死になってしまいます。これまでの「出商デパート」による販売活動では、生徒たちが物自体を元気よく売る活動になっていたように思います。出雲商高では商業科目を専門的に学びます。それは商品の仕入れから販売、接客、会計と多岐にわたります。日ごろの学習成果を生かす場が「出商デパート」であることが理想です。

 これまでの「出商デパート」で実践してきたビジネスマナーに加え、商業で学んだ専門知識を生かした販売促進をすることは、“商業高校だからこそできる販売実習”になると考えています。現在「出商デパート」に向けて各店舗、本部業務とも準備は大詰めを迎えています。生徒一人一人が「どのようにしてお客さまの満足度を高めていくか」ということを考えています。昨年度とは違った「出商デパート」をぜひお楽しみください。たくさんの方のご来場をお待ちしております。 (出商デパート副社長・三原恵)


仕入れ商品を検討している店舗担当クラス
家事を楽に■楽しく家事を「Wの楽」提供します

 今年、「出商デパート」では新しく日用品店舗を運営します。その経緯としてはこれまでのアンケート結果から、主婦の方が多く来場されていることが分かっています。これらの方を対象として、便利グッズを取り扱う店舗を出店してみてはという意見によるものです。

 この店舗のコンセプトとして「Wの楽」といった、家事をする人が楽になる、また、楽しく家事ができるようにしたいという思いが込められています。ニーズを考えたところ、取扱商品は主に調理器具や掃除用品などの種類豊富な便利グッズをそろえ、販売する予定です。ただ商品を販売するのではなく「Wの楽」を提供したいと考えています。また、生徒による実演販売も予定しています。

 今回の出商デパートの新しい試みは、新しい店舗の出店だけではありません。私たちのデパートの魅力とは何か、そして私たちにしかできないデパートとは何かを考えてみたところ、商業科目を生かしたデパートという考えに行き着きました。

 そのために、各店舗にエリアマネジャーを設置し、ストアコンセプトを考えました。どのような店舗にしたいか、ターゲットは誰か、また、他店にはない強みは何かを、店舗ごとに考えることによって各店舗の経営方針を明確にしました。さらに、それぞれの店舗の特徴を出すことにつなげていきたいと考えています。 (向野佳鈴マネジャー)


心込め笑顔でお迎え

 今年も29、30日に「第9回出商デパート」を開催します。今年の「出商デパート」は、今までのデパートとは違うものにしたいと思っています。そのために、各店舗のターゲットやコンセプトを考え、販売促進に力を入れています。生徒一人一人がお客さまの立場になり、どうしたら購入したいと思ってもらえるかを考えながら準備を進めています。

 また、お客さまの満足度を上げるだけでなく、従業員の満足度も上げる取り組みを実施します。今年も、毎年恒例のマグロの解体ショーや全国から仕入れた商品も取り扱っています。

 お客さまに「来てよかった」と思っていただけるよう、笑顔で心を込めてお迎えします。ぜひ出商デパートへお越しください。 (デパート社長=上田葉月、副社長=明山辰巳、三原恵)


子供たちも参加し大盛況だった「出商カフェ」
「出商カフェ」大盛況

 今年も10月19日(日)に出雲市大社町神門通りにある一畑電車大社駅前で「出商カフェ」を開催しました。当日は気持ちの良い晴天に恵まれ、多くのお客さまに来ていただき、活気あふれるイベントとなりました。

 今年は経済調査部、3年生の課題研究商業美術班、同じく3年生の課題研究マーケティング班の3つが店舗を設けました。もりっころクッキーやもりっころ、縁札などを販売し、その中でも特に目を引いたのはマーケティング班の「トマトすくい」でした。特にお子さま連れの方に多く参加していただき、とても楽しそうな声が響いていました。

 また、ダンス同好会のダンスや吹奏楽部による演奏、写真部による写真の展示などの催し物もありました。

 来ていただいたお客さま、そしてこの出商カフェに携わっていただいた関係者の皆さま、本当にありがとうございました。 (飯塚千沙子)


「木育の森」での伐倒体験を前に専門家から話を聞く生徒たち
学び深め森づくりに夢

 課題研究商業美術では、校舎に隣接する約1653平方メートルの森を須山木材様(出雲市白枝町)から借り、学びに生かしている。

 雑木が生い茂り手つかずの荒れた森は、最初真っ暗で踏み入ることもできなかった。メンバー21人がアイデアを出し合い、また里山についての学びも深めながら森づくりに夢を描いている。

 11月5日には出雲森林組合の協力も得て伐倒体験もした。もりふれ倶楽部(くらぶ)の野田真幹理事を講師に、木々をどう活用するか、生物たちとどう共存するかなどの森づくりのヒントを得た。

 今後、昨年度から続けている間伐材で作る木育おもちゃの開発と関連づけたり、この森の木から香りを抽出する実験もした。今後も森でのさまざまな活動を企画しながら、木や森林との関わりを主体的に考える力をつけていきたい。持続可能で、循環型の森をデザインし、学びの森として地域の方々にも広く親しんでもらいたい。

 3月には「木育の森のカフェ」も計画しており、ビジネスの視点も大切にしながら、自然・環境に対する問題意識を高めていこうと考えている。整備を始めてから光が入り、風通しもよくなり、今ではたくさんの野鳥が行き来している。広葉樹の落ち葉を踏みしめながら散歩できるようになった。これからがとても楽しみだ。 (周藤純平)


「オリジナルていさ」の商品化に向けて研究を重ねる生徒たち
「ていさ」調査で出雲の街を知る 経済調査部

 出雲商高経済調査部は本年度、出雲大社に伝わる「ていさ」というお菓子をテーマに活動を行っています。出雲大社や「ていさ」に関係するたくさんの地域の方々の協力のもと、出雲大社の歴史や和菓子について学習を深めてきました。

 現在は、現代風にアレンジした「オリジナルていさ」の商品化に向けて、企業の方と商品開発を進めています。この活動を通して出雲大社についての知識が深まったことはもちろんですが、出雲には素晴らしい伝統の技術が残っていること、また、その技術を持っている職人さんたちの高齢化が進み、伝統が消えかかっていることなど、出雲の街が抱える問題についても知り、考える機会となりました。今後も出雲の街とたくさんの人たちとのご縁が結べる存在になるため、地域の方々や出雲の歴史に触れていきたいです。 (経済調査部長・入江奈美)


NIE・図書館活用教育 新聞活用し学習に深み

 出雲商業高校はNIE実践校になって6年目です。図書委員の生徒たちが毎朝、8紙の新聞を教室棟のコーナーや談話室、職員室に配置し、多くの生徒に読んでもらおうと工夫しています。また、学年ごとにさまざまな教科で新聞を活用した授業を行っていますが、放課後もスクラップ作成や、新聞記事から小論文対策に取り組む生徒で図書館はにぎわっています。

 本年度は「出商デパート」と、商業科目と新聞とを結びつける目的で、マーケティングの授業で新聞を活用した「知識構成型ジグソー法」を実践しました。「理想の店舗とは?」という課題解決のために、教科書や新聞記事を読み、グループ内で話し合い活動をする参加型の授業です。

 店舗設計についてはそれまで抽象的な意見しか持っていない生徒たちでしたが、「店舗の入り口が大切」や「陳列で高低差を生かす」といった、具体的な店舗設計の意見をまとめることができました。新聞を活用したことで、より具体的かつ実践的な学習として深みのある授業を展開することができました。

 この活動で学んだ知識を「出商デパート」で生かし、授業と実学を結びつけるとともに、今後とも新聞を通じて多くのことを学ばせたいと思っています。 (NIE担当・石川隼人)

2014年11月27日 無断転載禁止

こども新聞