レッツ連歌(下房桃菴)・1月8日付

(挿絵・岡本 健一)
<2015年新春特集>

 あけましておめでとうございます。

 今から十七年前、一九九八年の新春特集の前句は、

   でっかい夢を語る正月

その句に、めでたく、

  五十年百年続く連歌欄

と付けてくださったかたがいらっしゃいました。

 同じかたからは、昨年五月(第四八一回)にも、

  顔は知らぬがレッツのライバル

  五百回記念に皆で集まって

という作品もお寄せいただいております。

この「レッツ連歌」、五十年には遠く及びませんが、それでも、この三月十二日、ほんとうに五百回目を迎えることになりました。

 それを記念して、ファンが一堂に会して、大いに飲み大いに語り大いに笑おうという企画が、いま持ち上がっております。言い出しっぺはもちろん、先の付句の作者、植田延裕さん。三月末か四月はじめの、土日をお考えのようです。

 レッツの会は、一九九六年までに六回やっていただいておりますが、以降は絶えて開かれておりません。今回は久方ぶりに古くからのファンのかたがたと、また、新しい仲間のみなさんとは初めてお会いできることと、私も今からワクワクしております。

 一人でも多くのかたがご参加くださいますよう、心よりお願い申しあげます。

 計画が煮詰まったところでまた、この欄でお知らせいたしますが、より詳しくお知りになりたいかたは、応募はがきの片隅にでも、その旨ひとことお書き添えください。延裕さんから直接案内が届くよう、お願いしておきます。

           ◇

 愛知県豊橋市にある、市立五並(いなみ)中学校をご存じでしょうか。

 この学校では、一九八五年から二〇〇八年まで毎年、連凧(れんだこ)揚げに挑戦してこられました。最初の年の一、七一三枚から始まり、紆余(うよ)曲折を経て、一九八八年には五、七四〇枚、一九九〇年には六、二〇〇枚、翌九一年には一一、一〇〇枚と記録を伸ばし、九七年、一二、六七七枚を揚げて、ついにギネス記録を達成。翌九八年には一五、五八五枚で自己記録を更新―。これが現時点のギネス記録なのだそうです(同校ホームページによる)。

 さて、みなさんの連凧やいかに―。

           ◇

 ギネスブックに挑む連凧

また一つもうあと一つまだ一つ (松江)森広 典子

初夢を乗せて大空高く舞え   (江津)佐々木初美

似顔絵を石州和紙に描きつづけ (浜田)滝本 洋子

ひまわりに写り予報士とまどわせ(益田)可部 章二

申請のしかたどなたか知りません(松江)相見 哲雄

九日も休める今年のお正月   (松江)岩田 正之

会場は田んぼアートを刈った跡 (浜田)松井 鏡子

じいちゃんの昔鍛えた腕が鳴り (益田)山下 昭子

村民の願いを込めた村おこし  (大田)掛戸 松美

拉致の子へ届けと願い繋ぐ糸  (出雲)矢田カズエ

和太鼓の同時演奏花を添え   (益田)竹内 良子

初夢はジャックと昇る雲の上  (浜田)勇 之 祐

登録にどういう意義があるだろか(松江)本田  章

後陣は芋煮ふるまう女性軍   (松江)余村  正

夕方も夜もニュースは予約済み (出雲)野村たまえ

風を読む漁師の勘は衰えず   (出雲)飯塚猫の子

夜なべするジジの心はときめいて(江津)江藤  清

気前よくお札に糸をつける夢
            (広島・海田)ヤヤンの娘

お目当ては無料で飲める蜆汁  (松江)加茂 京子

鯉や龍仙人天女も描き入れて  (松江)松田とらを

核のない平和をめざすメッセージ(出雲)行長 好友

健さんに届けと黄色く染めました(松江)佐々木滋子

羨んで見上げる髭の奴さん   (松江)金津  功

あと二枚残してジジは雲の上  (出雲)藤原 昌子

うたた寝の夢は天まで梯子かけ (雲南)難波紀久子

パソコンで上昇気流算出し   (江津)星野 礼佑

海山を越えて地球を一回り   (益田)吉川 洋子

神風が吹いて出雲の昇り龍   (出雲)原  陽子

目標は羊を空に二千匹     (益田)石川アキオ

豚汁の湯気立ち上る冬の空   (益田)黒田ひかり

ジャンボでも当たってからにしておくれ
               (松江)半田 有行

はやぶさを追って宇宙へ往ったきり
               (浜田)宇津崎育枝

爺ちゃんがやさしい顔の羊描き (松江)高木 酔子

通販でいっぱい買って繋ぐだけ (松江)川津  蛙

号泣もヤジもニュースとなる時代(出雲)黒田千華子

富士の山超えて尾っぽはまだ畑
             (東京・昭島)神田の狢

大空を龍のごとくに昇りゆく  (江津)星野 正子

レジェンドの葛西選手も風次第 (松江)野津 重夫

海渡りアイルランドに届くまで (美郷)芦矢 修司

道楽もここまで来ては妻も折れ (松江)三島 啓克

和紙貼って文化遺産と大書する (美郷)芦矢 敦子

ひぃふぅと数え直してあきらめて
              (津和野)岡田 忠良

斐伊川の土手は終日にぎわいて (松江)水野貴美子

うとうととテレビ見ている尻こたつ
               (雲南)安部 小春

豆の木がまた伸びたかと大男(出雲)はなやのおきな

雷にちょん切られたる雲の上  (松江)庄司  豊

呼ばれればどこにでも行くしまねっこ
               (江津)花田 美昭

応援は屋台で気炎上げており  (浜田)勝田  艶

見かけより一本筋を通すヤツ  (雲南)横山 一稔

ここの空島根鳥取どちらでしょう(松江)山崎まるむ

二万枚作っただけでよしとしよ (出雲)吾郷 寿海

ジェット機の窓から見えた奴さん(飯南)塩田美代子

あなたとは行きつ戻りつくり返し(出雲)西尾 佳子

雷鳴がとどろき龍になっていく (松江)田中 堂太

はやぶさとドッキングするかもしれぬ
               (浜田)山崎 重子

今のうち雷さまは昼寝中    (出雲)栗田  枝

突風に負けて曳かれて尻スキー (出雲)石飛 富夫

富士を背に遠州灘の風受けて  (松江)中西 隆三

子や孫にひ孫も揃い息合わせ  (松江)森  笑子

今日もまた風待ちだけで日が暮れて
               (松江)林谷 悦子

佐比売山上から覗く昇り龍   (出雲)明石や小枝

冬型の気圧配置が続くでしょう (出雲)津戸 弘光

あの人と私を繋ぐ縁となり   (松江)花井 寛子

子どもらは一枚ごとに願い書き (松江)持田 高行

一字ずつ恨みつらみを書きなぐり(出雲)放ヒサユキ

祝賀会今日も予約は取ってある (安来)根来 正幸

まだそんなことするのかとベンジャミン
               (益田)石田 三章

楽しんで人が集まる知恵を出し (美郷)源  瞳子

三人もノーベル賞を受賞され  (雲南)板垣スエ子

いつしかに気象予報が本職に  (松江)黒崎 行雄

大空を絆のままで泳がされ   (益田)小倉  豊

打ち上げは縁起をかつぐ黒ビール(松江)安東 和実


           ◇

 洋子さんの「地球を一回り」にはたまげました。文句なしの新記録!

 修司さんの「アイルランド」のほうは、ただ遠いというわけではありません。ギネスの本社がダブリンの郊外にあるのですね。

 ついでにいえば、本業はビールの醸造。苦味のきいた黒ビールです。一九九七年の十、十一月、ダブリンに滞在して、毎夜グイグイやりながら、レッツの原稿を書いては日本に送っていたことを、なつかしく思い出します。

 凧の絵柄や凧に書く文字ことばもいろいろあるでしょう。似顔絵であったり、鯉や龍や干支(えと)にちなんだ羊の絵、あるいは「文化遺産」と大書したり、子どもらの願いごとであったり…、そこまでは分かるのですが、「一字ずつ恨みつらみを書きなぐる」人というのは、いったいどんな性格なのでしょうか。

 ふつうの凧揚げでも気象条件に左右されますが、まして連凧ともなれば、漁師の勘に頼るか、パソコンを使うか、神風を期待するか、雷様の昼寝を狙うか。あらゆる手段を尽くしても、「突風に負けて尻スキー」したり、「風待ちだけで日が暮れ」たり…。五並中学校でも実は、二十四回のうち三回は、揚がった凧が〇枚、という苦杯を舐(な)めておられます。

 なかなか成功しないそんなもどかしさを、しかし正幸さんは、実に、ユーモラスに表現してくださいました。

 ちょっとシラケた句もありました。

本人は真剣でも、「どういう意義が」と思う人も、たしかにいるでしょう。まして家族ともなれば、「ジャンボでも当たってから」と文句を言いたくなるけれど、「道楽もここまできては…」ね。

 中には、ぜんぜん興味がないわけじゃないけれど、「うとうととテレビを見てる」人もある。

 それにしても、「尻こたつ」ということば、はじめて聞きました。でも、ネットで調べてみたら、いきなり楽しいイラストがボーンと出てきて、瞬間に意味が分かりました。みなさんもお試しになっては?

 三章さんの「ベンジャミン」は、ベンジャミン・フランクリンといえば、どなたもお分かりですね。理科の教科書に、かならず出てきます。

 「絆」ということばは、いまは主に、人と人との結びつきという意味で使いますが、元来は、鷹や犬など動物を繋(つな)ぎとめる綱のことです。豊さんの句は、凧を鳥かなにかに見立てたのですね。おもしろい句になりました。

 以上、七十二連のレッツ凧、みごとに揚がりました。

 「新春特集」ということで、はじめてのかたの挑戦も目立ちました。懐かしいお名前もありました。年中お正月だといいですね。

           ◇

 が、そんなわけにもいきません。

で、いきなり日常に戻って、次の前句です。

  お買い得品買って損する

 付句は五七五。

 前句に二回出てくる「買う」ということば、それに、「損」「徳」ということばはくり返さないのが原則です。初心者のかたは特にご注意ください。

               (島根大名誉教授)

2015年1月8日 無断転載禁止

こども新聞