映画プロデューサーのささやかな日常(22)

大みそかに閉館した新宿ミラノ座。多くのファンが幕引きを惜しんだ=東京・新宿
 日本最大の映画館「新宿ミラノ座」閉館

     館は消えても変わらぬ感動

 新年あけましておめでとうございます。昨年、映画界でもさまざまな話題がありましたが、実は年末最後に非常に大きな出来事がありました。大みそかを最後に、東京・新宿にある日本最大の映画館「新宿ミラノ座」が閉館したのです。

 新宿ミラノ座は1956(昭和31)年12月に開館した縦8メートル、横16メートルの大スクリーン、1064席の座席を持つ大劇場。新宿エリアでは新宿プラザ劇場や新宿オデヲン座など老舗映画館が次々と閉館し、最後に残っていたのがこの新宿ミラノ座でした。

 最終興行として、最後の20日間は『荒野の七人』『アラビアのロレンス』『戦場のメリークリスマス』『セーラー服と機関銃』『新世紀エヴァンゲリオン劇場版Air/まごころを、君に』など、新旧の名作が入場料一律500円で特別上映されました。そして最終上映作品に選ばれたのは、1982年公開の『E.T.』。

 この情報を知った僕は、どうしても最終興行を見たくなり、大みそかの慌ただしい中、新宿に向かいました。開演1時間前の正午ごろに到着すると、すでに700人くらい、500メートル以上の行列がありました。座席指定ではないので、最後尾に並んで開場を待つことに。開場後は、あっと言う間に映画ファンで満席となりました。立ち見も含めて、約1300人もの人々が駆けつけたそうです。

 32年ぶりにスクリーンで見る『E.T.』は、僕の映画原体験ともいえる大切な作品。ダイナミックな音楽と映像、E.T.を自転車のかごにのせ、空を飛ぶ瞬間の感動は、少年の日の記憶そのものでした。「色あせない感動」とはこの事を言うのでしょう。

 上映後、支配人が登壇し、「長年のご愛顧ありがとうございました。映画への熱い思いは永久に不滅です」と話すと、大きな拍手と歓声が起こりました。多くの映画ファンや劇場スタッフたちが万感の思いを込めて見送る中、新宿ミラノ座は58年の歴史に幕を下ろしたのです。

 閉館の大きな理由は、同じ地域内にできたシネマコンプレックス(シネコン)にあることは間違いないでしょう。シネコンは、一つの劇場内にいくつものスクリーンを内包する形式の劇場です。効率的で機能的な設計やシステマティックな入場方式で、一度に多数の作品を提供する、いわば映画のコンビニと言ってもいいでしょう。

 観客の趣味趣向が細分化している現代ではもはや、壮大なスケールでなおかつロマンチックで、上映する作品にそれぞれの劇場の色が出るような映画館は必要ないのかもしれません。

 高倉健さんや菅原文太さんが亡くなり、ついにミラノ座までも閉館しました。輝かしい一時代を築いた名優や劇場が消えていくのに立ち会うということは、とても切なく悲しいものです。これからの映画はどのように変化していくのか、変わらないものは何か。考えつつ、新しい一年が始まりました。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2015年1月9日 無断転載禁止