検証 全豪8強(4) 窮地の経験 糧に

デビスカップ日本代表監督 植田実氏
デビスカップ日本代表監督 植田実氏

 コーチング進化も必要

 全米オープンから深めてきた自信よりも今の位置(世界ランキング5位)になって環境が変わった戸惑いがあったと思う。それでも、誰もが「強さ」を認める中で、きっちりベスト8に入った。力は着実に上がっている。

 準々決勝で対戦したスタニスラス・ワウリンカ(スイス)は、すごく集中していた。全米で対戦した時は隙があった。普通は、そういう風に勝ったり負けたりする。

 だが、長年「トップ」にいるロジャー・フェデラー(同)やラファエル・ナダル(スペイン)は勝ち続けてきた。並大抵ではないメンタルとフィジカルの強さだ。

 そんな彼らを打ち破ることができるのは世界に何人か。その一人に錦織圭は間違いなく入っている。これからは窮地から巻き返して、勝利に結びつける経験の積み重ねが必要だ。決して諦めないから、フェデラー、ナダルはトップにいる。

 通常、試合の前は(試合展開について)あらゆる想定をする。目標も確認する。コーチのマイケル・チャン、ダンテ・ボッティーニは「優勝するために来ているんだ。やれるんだ」と散々言っているはずだ。

 錦織にとってのチャン・コーチ(元全仏オープン覇者)のように、選手は「レジェンド」の経験が必要になる時がある。コーチ自身の成功体験とそれ以上の失敗の反省から、新しい言葉が生まれ、的を射た助言になる。

 ただ、全仏で何連覇(05~08年、10~14年)もしているナダルのような選手と戦うのは容易ではない。

 コーチングの進化も必要だが、(加えて)錦織には「新しいテニス」がある。

 (全仏の)赤土のコートで見せるような、前のポジションでの速いプレー。ハードコートのプレーがクレーでもできる。そのオールラウンドな能力で新時代をつくる可能性を持つ。

 プレーは自分でコントロールができる。あとは、自分では操作できないもの、例えば、メディアの加熱、周囲の期待などのストレスにいかに耐えるか。スーパースターになるために必ず通る道を歩んでいる。

     =おわり=


 うえだ・みのる 2012年12月から男子国別対抗戦デビスカップ(デ杯)日本代表監督。現役時代は1982、86年のアジア大会代表。2004年アテネ五輪、05~09年女子国別対抗戦フェドカップの代表監督も務めた。びわこ成蹊スポーツ大教授。北九州市出身。57歳。

2015年2月6日 無断転載禁止

  • 47クラブ