(60)稲積家住宅(邑南)

江戸後期の建築様式を色濃くとどめる稲積家住宅
 庄屋屋敷が今交流拠点

 1844(弘化元)年に建てられた大型の庄屋屋敷・稲積家住宅(邑南町井原)。井原川の左岸に位置し、落ち着いたたたずまいを見せている。江戸後期の建築様式を色濃くとどめているのが特徴で、主屋と二つの土蔵、門の計4件が国の登録有形文化財(建造物)になっている。2007年にUターンした所有者が傷んだ住宅を再生させ、今では地域住民の活動の場にもなっている。

 主屋は建築面積267平方メートル。奥座敷の手間に仏間を配すなど、中国地方の上層農家に見られる間取りになっている。小屋床には防火や防寒のため粘土を敷き詰めた「大和天井」と言われる建築技術が使われ、太さ68センチのマツ材の梁(はり)が重みを支えている。屋根は二重構造で、もともとはかやぶきだったが、1910(明治43)年に瓦にふき替えられた。

 二つの土蔵も1844年築で、総2階建ての切り妻造り瓦ぶき。門は1930(昭和5)年に地元大工によって建てられた。

 稲積家は藩政期に井原村の庄屋、近代は村長を務めた家柄。建物は個人宅として使用してきた。一時空き家になっていたが、東宝の元宣伝マンで、現当主の稲積慎吾さん(77)が2007年1月にUターンし、NPO法人の協力を得て修繕。基礎を補強したほか、床板を張り替え、いろりを修理し、再生させた。

 以降、クリスマスコンサートが開かれたり、小学生が泊まる通学合宿に利用されたりと、地域の拠点施設に。田舎ツーリズムの指定施設にもなっており、町外からも毎年、古民家ファンらが訪れている。

 稲積さんは「大勢の人に利用してもらい、人の輪が広がっていけばうれしい」と話している。

2015年1月22日 無断転載禁止