レッツ連歌(下房桃菴)・3月12日付

(挿絵・FUMI)
 おかげさまで、500回を迎えることができました。年でいうと、今年は21年目!

 一方で、少し遅れて始まった、NHK松江の「付句道場」は、本年度かぎりで、18年の幕を閉じることになりました。忘れられない思い出もいっぱいあります。

 10年も前でしょうか。いきなり20、30句も作品を送りつけてきたかたがありました。でも、正直いって、どれもこれもサマにはなっておりません。早い話がぜんぶボツ。

 その日、放送が終わったとたん、局に電話がありまして「先生、投句者のかたからです。自分の作品のどこが悪いのかお教え願いたい、と…」

 私は受話器を取るなり「すべてが悪い」と、よっぽど言ってやろうかと思ったのですが、さすがにそんなわけにも行かない。で、思い直して「最初の句は、ちょっと前句に近すぎるようで。次の句は、離れすぎていて、やや意味が取りにくい。3句目は…」という具合に、結局は、一句ずつ順に、ぜんぶ丁寧に説明させていただきました。

 その間、黙って聞いておられます。ひととおり話を終えますと、一瞬間をおいて「ありがとうございました。よ~く分かりました。勉強になりました!」

 それからは、目に見えるように上達されまして、すぐに「道場」でも「レッツ」でも毎回のように入選される、付句の達人におなりになりました。

 といえば、もうお分かりでしょう。一昨年お亡くなりになった多胡誠夫さんです。

 実は、誠夫さんのことは、松江放送局の「島根ハートニュース」で、近く取り上げられる予定とうかがいました。うれしいことですね。みなさん、決してお見逃しなきよう、この場を借りて、お知らせ申しあげます。

           ◇

その後は聞かぬ天才少年

ホトトギス一声鳴いて飛び去りぬ(大田)大谷  勇

高校に入り彼女と手をつなぎ  (松江)植田 延裕

マスコミは忘れたころにやってくる
               (出雲)吾郷 寿海

ロボットに顎で使われ過ごす日々(益田)石川アキオ

スクラップ記事は黄色く変色し (大田)掛戸 松美

わが家でも頭抱えておりますの (出雲)矢田カズエ

教え子の文集に付いている付箋 (益田)可部 章二

あやかった名前クラスに五人いて(雲南)安部 小春

なまぬるきゆとり教育十二年
            (三重・伊勢)木村 ふう

一〇〇点が五枚あったよお母さん(出雲)川上 梨花

本物の自分を捜す年となり   (大田)杉原サミヨ

戦争ではかなく散った桜花   (雲南)板垣スエ子

熱湯を注いで煎茶渋くなり   (出雲)原  陽子

ソロバンを使う時代は遠く去り (松江)佐々木博章

母だけはいまだに夢を捨てきれず(松江)花井 寛子

間違いじゃなかったあの子わたしの子
               (浜田)宇津崎育枝

乳離れ少し早すぎたのかしら  (松江)余村  正

親戚も少なくなってきたらしい (益田)田原 静枝

いつまでも同窓会のネタにされ (益田)石田 三章

来ていたとだれも気づかぬ同窓会(美郷)芦矢 敦子

ウチの子と同じ大学行っちょうと
              (奥出雲)松田多美子

留学の資金を貸してそれっきり (浜田)勝田  艶

インベーダーゲームのほうが引退し
               (松江)田中 堂太

ソプラノが声変わりした十五歳 (益田)黒田ひかり

今はあのガキ大将のカバン持ち (松江)半田 有行

屋上に残る天体望遠鏡     (江津)岡本美津子

このオレがそうだったとは言い出せず
               (益田)吉川 洋子

あのころはスプーンぎょうさん売れました
               (江津)花田 美昭

修行僧過去を封じて今を生き  (安来)宇山 治恵


           ◇

 次の前句は、

  バアちゃんはデイサービスへ紅を引き

 いよいよ春ですね。陽気な七七をお願いします。

               (島根大名誉教授)

2015年3月12日 無断転載禁止

こども新聞