映画プロデューサーのささやかな日常(24)

映画「ソロモンの偽証<前篇・事件>」より((c)2015「ソロモンの偽証」製作委員会)
 嘘に向き合う子どもたちの勇気

     硬直化の大人社会に一石

 これまでにも多くの傑作が生まれてきたミステリー、サスペンス映画。最近では『八日目の蝉(せみ)』や『告白』、古くは『砂の器』『天国と地獄』など傑作の多いジャンルです。事件の背後にあるさまざまな人間の欲望と思惑を見つめることで、あらためて私たちが生きる意味を考えさせてくれます。今回はそんな映画をご紹介します。

 宮部みゆきさんのベストセラー小説を映画化した『ソロモンの偽証 前篇・事件』(7日公開)、『同 後篇・裁判』(4月11日公開)の2部作です。

 原作は、宮部さんが15年の構想と9年の執筆期間をかけて生み出した2千ページを超える傑作巨編。『模倣犯』『理由』などの映像化作品も人気を博し、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、吉川英治文学賞ほか名だたる文学賞を受賞した作家が、“作家生活25年の集大成”として書き著した渾身(こんしん)の超大作です。

 物語は、クリスマスの早朝に中学2年の男子生徒の遺体が発見されることから始まります。状況から自殺と判断されるも、殺人だとする匿名の告発状がクラス委員の藤野涼子と学校に届きます。いじめていたとされる生徒が告発されるも真実は不明瞭なまま。真実を求める涼子と仲間は学校や親にかけあうも、一向に調査は進みません。容赦ないマスコミ報道や煮え切らない学校側の態度に業を煮やした涼子は、学校内裁判を開き真実を突き止めようとするのですが…。

 この大プロジェクトの映画化には、日本アカデミー賞やキネマ旬報ほか、国内の主要映画賞30冠に輝く『八日目の蝉』に関わったスタッフが挑みました。メガホンをとった成島出監督を筆頭に撮影、録音、編集、音楽ともに最強の布陣です。主演の藤野涼子さんをはじめ、出演する中学生役の33人は、日本映画では例のない1万人規模のオーディションで実に半年以上の選考を経て選ばれました。

 佐々木蔵之介さんや脇を固める名優だけではなく、ほぼ新人の少年少女たちの実直で切ない演技にグッと引き込まれます。彼らの心の中に宿るのは、ただ真実を知りたい、という素直な気持ち。親や教師たちはいろいろな事情でその思いを止めようとします。果たして涼子たちは裁判を行うことができるのか? そして隠された真実とは…。

 昨今、世の中で起きている子どもたちに関わるさまざまな事件を想起させる設定です。しかし、語られるのはあくまでも登場人物たちそれぞれの熱意と勇気です。子どもたちのまっすぐな思いが硬直化した大人社会にぶつけられるとき、何が起きるのか。僕はこの映画を見て、強く心を揺さぶられました。スクリーンでこそ見応えのある傑作です。ぜひお見逃しなく!

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2015年3月13日 無断転載禁止