(9)絵巻物で見るたたらの工程

切羽・井手
先大津阿川村山砂鉄洗取之図

 「先大津阿川村山砂鉄洗取之図」(東京大工学・情報理工学図書館提供)は、江戸時代末期に長州藩営の「白須たたら」(現山口県阿武町)の全工程を描いた絵巻物で、全長46メートルに達する。原料の調達から製品の完成まで、一連の作業が詳しく描かれた貴重な資料だ。この絵巻物を展示した企画展「たたら製鉄と近代の幕開け」の図録(島根県立古代出雲歴史博物館発行)を参考に、たたらの工程を絵図で紹介する。


【切羽・井手】

砂鉄の採取と運搬
 たたら製鉄の原料となる砂鉄は、山を切り崩して採取する。山の上に堤を造って水をためて、井手(用水路)に水を流す。この水の勢いで、切羽(きりは)(採掘場)で採掘した土を押し流す。切羽での作業は危険が伴い、時には土砂崩れの事故も起きた。

 

【砂鉄の採取と運搬】

浜砂鉄
 切羽より下流で、土を含んだ水が流れる用水路を走(はしり)と呼ぶ。長さは数キロに及ぶ場合もある。「比重選鉱」は比重が軽い砂を水で流し、比重が重く水底に沈んだ砂鉄を採取する。絵図ではより分けた砂鉄を馬で運搬する様子も描かれている。

 

【浜砂鉄】

炭焼き
 海岸部の砂浜で採取される「浜砂鉄」。島根県内では、江津市など江の川の下流域にあたる日本海沿岸部で、浜砂鉄が採取された。

 

【炭焼き】

高 殿
 製鉄に用いる木炭を「大炭」と言い、窯を作って焼いた。炉内での燃焼で発生する一酸化炭素に、砂鉄(酸化鉄)を還元する作用がある。マツ、クリ、マキなどの太いものが良いとされる。大鍛冶場で使う炭は「小炭」と呼び、製造法も異なる。

 

【高殿】

製 錬
 中央の「タタラフキ屋」が、製鉄が行われる高殿(たかどの)。高殿の前には炉でできた■(金ヘンに母)を冷やす池があり、手前の山は鉄滓を捨てた場所になっている。高殿を中心とした製鉄を行う集落は「山内(さんだい)」と呼ばれた。

 

【製錬】

 中央の長方形の土で作った製鉄炉(釜)に、村下が「種鋤」を使って砂鉄を投入している。製鉄炉の両側には天秤鞴(てんびんふいご)が配置されており、「番子」が踏んで、製鉄炉に風を送っている。炉の手前には、炉に炭を入れる準備をしている人の姿も描かれている。

 

【大鍛冶】

 高殿で作られた■(金ヘンに母)などから、鉄素材の「包丁鉄」を作る作業場。中央に3軒の「大鍛冶屋」が並んでおり、真ん中の大鍛冶屋の前の棒状のものが包丁鉄。大鍛冶屋の中では、手押しで送風する「吹差鞴(ふきさしふいご)」が描かれている。手前の「下小屋」は労働者の住宅。

2015年3月23日 無断転載禁止