(63)津和野百景図(津和野)

津和野の名所や行事などを描いた「津和野百景図」
 藩内くまなくスケッチ

 高い石垣がそびえる津和野城や秀峰・青野山、弥栄神社の鷺舞、鷲原八幡宮の流鏑馬(やぶさめ)神事、殿町通り…。今の津和野町に脈々と受け継がれた有形、無形の文化財や名所を100枚の絵と解説で紹介した「津和野百景図」(町郷土館所蔵)には、江戸末期の津和野藩内の風景や人々の暮らしが生き生きと描かれている。

 作者は、藩主のそばに仕え、数寄屋番(すきやばん)として藩士や訪問者をもてなした栗本格斎(本名・里治(さとはる)、1845~1925年)。若いころに狩野派の絵を学び、その卓越した画才で、亀井家11代で最後の津和野藩主となった茲監(これみ)の業績を記した「以曽志乃屋(いそしのや)文庫」の資料として、「津和野城下全景図」など数多くの絵を残した。

 津和野百景図も、以曽志乃屋文庫の付属資料の一つ。亀井家14代茲常(これつね)の依頼を受けて、格斎が晩年の1910年から4年の歳月をかけて、全5巻にまとめた。

 一般にはほとんど公開されなかったが、亀井家から譲り受けた町教育委員会が2010年度、合併による新町発足5周年記念事業で初展示するとともに図録(横A4判、170ページ)を出版。対比できるよう現在の写真を併載している。図録は、津和野町森村の町郷土館で販売(定価2500円)している。

 町は、津和野百景図を活用した町歩きを構想し、地域の歴史や文化財を国内外に発信するため国が創設する「日本遺産」への認定を目指す。町教委文化財担当の米本潔さん(46)は「格斎は当時の藩内をくまなく歩いてスケッチし、将来に継承すべき伝統文化を津和野百景図として残してくれた。この貴重な資料を町民とともに受け継ぎ、広く紹介していくのがわたしたちの責務だ」と話す。

2015年3月26日 無断転載禁止